COLUMN2016.12.2

【AR×VR対談】テクノロジーが創るリアルコミュニケーション meleap 新木仁士 × アマナデザイン 松葉 忍 ——対談から見えてきた近未来のカタチ

左/meleap 新木 仁士 右/アマナデザイン 松葉 忍


AR技術を用いて技や魔法を繰り出しながら、フィールドを自由に動きまわり対戦する「HADO」をご存じでしょうか? レジャー施設のアトラクションなどにも導入され、注目を集めています。

その開発を手がけているmeleapの新木仁士さんと、アマナで数多くのVRコンテンツを制作している松葉 忍が対談。ARとVR、ふたつの世界のプロが語り合う先に、新しいテクノロジーが目指すべき具体的な姿が見えてきます。

 

リアルに相手の顔が見えるコミュニケーションを現実世界で

松葉 私も実際に「HADO」を体験して夢中になってしまいましたが、このサービスを始めたきっかけは?

新木 もう単純に“かめはめ波”を撃ちたくて(笑)。会社を立ち上げて、最初の半年間は数多くのアイデア出しをしました。“空を飛びたい”、“水中でも呼吸をしたい”、いろいろなアイデアが出ました。その中から、実現できるか、事業として成り立つか、自分達が熱狂して作り上げられるかといったことを考慮して、「HADO」に集中して開発したんです。

松葉 最初からARを使うと決めていたのですか?

新木 いろいろ選択肢はあって、VRで実現できないか検討したこともありました。でも、「HADO」の重要なキーワードは身体性、身体を動かして楽しむこと。コードでつながっていると動きにくいんですね。それに、VRのヘッドマウントディスプレイにカメラを付けてやろうとすると、ゲーミングPCを背負わなければならず、動きが制限される。そこで、動きやすさを優先してスマートフォンを活用したARを採用しました。

それと、開発するうえでのポイントとしたのが、現実世界でまわりの人とコミュニケーションしながら楽しめること。現実世界で楽しめるARなら、画面越しの遊びではなく、リアルに一緒に遊んだあとに握手しお互いの健闘を称え合うことができます。

 

松葉 ARならヘッドマウントディスプレイは装着していますが、相手の顔が見えますからね。

新木 そうなんです。リアルタイムに相手の顔や動きが見えることを大事にしています。人間って、目の前の生身の人と話したい、微妙な顔の表情を見たいという根本的な想いがありますよね。仕事でも、スカイプで会議したりしますが、実際に会って話したほうが情報量が多く、やっぱり目の前に相手がいると格段にお互い気持ちを伝えやすいです。


評価のポイントは、観客も楽しめる一体感と回転率

松葉 すでにさまざまな企業がイベントなどで「HADO」を活用していますが、どんなところが評価されていますか?

新木 「今までにないエンターテインメントで面白い」と仰って頂くことが多く嬉しい限りです。プレイ映像をリアルタイムにモニターへ出力するので、まわりで見ている観客も一緒に盛り上がって楽しむことができます。その映像をネット配信によって、スポーツバーなどにいながらにして気軽に楽しめる将来はすぐそこにあります。

松葉 ARは現実世界に紐付いているので、カメラで撮影して大きくプロジェクターに投影してあげれば済むんですね。VRだと360度の映像をただそのまま表示すると、見ている人は酔って気持ち悪くなってしまう。他の人が楽しみづらいというのが、いつも課題としてつきまとっています。

新木 もうひとつ評価される点は、回転率なんです。テーマパークやゲームセンターでは1時間あたりどれだけお客さんがプレイできるか、という回転率が重要になってきます。「HADO」はそれなりにスペースが必要ですが、例えば対人戦だと1回の対戦で6人同時にプレイすることができます。時間的には最初の説明を含めて5分で終了します。モンスター戦は最大8人同時プレイでき、同じく5分で一通り終わるので、体験プレイヤー数は96人/時間となります。

松葉 確かにVRコンテンツでは、そうはいかないですね。まだヘッドマウントディスプレイを装着したことのない人が多いため、この取り扱い方や注意点などをいろいろと説明してからようやくコンテンツをスタートさせるので、運営体制をしっかり考えないと、時間がかかってしまうことが多いです。 

 

新木 私たちも、なんとかしてオペレーターと呼ばれる操作を説明する人がいない状態にしたいと考えています。ゲームセンターにあるアーケードゲームのように、ボタン2、3個で済むくらいを目指したい。それができればもっと普及し易くなりますし、費用も安く済みます。

 

課題解決のために、VRでもARでも最適な技術を選ぶ

松葉 「HADO」を体験してうらやましいなと思ったのは、コンテンツが既にエンターテインメントとして昇華しているところ。VRもエンターテインメントと相性が良いのかもしれないですが、どうしても1対1というところが強いので、複数人が楽しめるという部分をどうにか実現したいです。

新木 逆に、VRでうらやましいと思うのは、一般層にVRというキーワードが認知され始めていること。VRは認知度が高いんですね。だから、私たちのブースに来てくださったお客様や企業の方に「これ、VRだよね」って言われることがよくあります。あまり気にしてませんが(笑)

松葉 VRもARも、お客様の課題を解決するためのツールだと思っているので、そのためには、VRだけにこだわらずその時々でいろいろな方法を検討しています。何を伝えたいか、そのためにどんな体験を届けることができるかを重視しているので、VRであること自体はそれほど重要ではないんです。

新木 ARを使っている「HADO」も、スキルのエフェクトやドラゴンの3Dモデルなどを数多く同時に登場させると、体感としてはほぼVRの世界と変わらなくなります。実際に将来やりたいことのひとつが、渋谷のスクランブル交差点に巨大なドラゴンを登場させて100人規模のパーティーを組んで倒したい。実現するためには、まずヘッドマウントディスプレイを、メガネやコンタクトレンズのような普段みんなが身につけているものにどれだけ近づけられるかが課題になってきます。

松葉 たまに移動中に急いでコンテンツを確認しなくてはいけない時があるんですが、さすがにまだ電車の中でヘッドマウントディスプレイを装着するのは…… カフェならもうやっていますが。

新木 ぜひ、装着してください。きっともうすぐヘッドマウントディスプレイをつけて電車に乗っていると、「あの人、スマートじゃん」って言われる時代がきますよ(笑)。

 

何を体験するかで没入感は変わってくる

松葉 VRのひとつの大きな特徴である没入感については、ARを使う時にどう捉えていますか?

新木 VRは、ひとつのことに集中するのには最適なツールとよく言われますよね。逆に言うと、いくつか同時にする行為が難しい。例えば、VRを体験しながらコーヒーを飲むことさえ、すごく辛いじゃないですか。実際にやったら、ほぼ間違いなくコーヒーをこぼします。一方、没入感の少ないARは、レシピ情報を見ながら料理をしたり、バーチャルの情報を見ながら隣の人と話をしたり、そういった何かをしながら補足的に情報を知りたいというシーンに適しています。「HADO」も没入感はある程度は意識していますが、完全に没入させようという方向には考えていないですね。

松葉 今のところ私は、VRを使う以上は没入させるべきかなと思っています。すべてのコンテンツに没入感が必要なのかはわからないですが。今後、VRが一般の生活シーンの中で使うようになってきたら、没入させないほうがよいのかもしれませんね。

 

新木 そうですね。ふだんの生活の中でふつうにVRやARが現れ始めてくれば、一気に普及すると思います。ARは、何かをしながら情報を見たい時に上手くはまります。両手を使っている時は特に。例えば道を探している時なども、スマホを見ながらウロウロ歩くと危ないじゃないですか。でも、シースル―型ARデバイスなら視界に情報を上書きして見せてくれるので特に危なくないです。あるいは、ガーデニング中は手が汚れているからタブレットを触れないのでARデバイスを使うとか。

松葉 一般の生活に入り込んでいくのはなかなか難しい。けれど、とても重要な課題ですね。

「テクノスポーツ」からヘルスケアまで幅広く

新木 私たちが目指しているのは、いつでもどこでも楽しめること。理想は、今みなさんが使っているメガネにペタッとシートを貼るだけでHADOが楽しめるくらい気軽な存在になれたら最高だなと思っています。「HADO」が先行していますが、私たちがジャンルとして生み出したいのは、ITとスポーツを掛け合わせた「テクノスポーツ」。身体を使って楽しめるコンテンツを、世界中にどんどん広めていきたいんです。積極的にハードウェアメーカーと組んでリストバンドデバイスやメガネ型ARデバイスを開発したり、着られるウェアラブルデバイスをファッションメーカーと共同で開発していきたいと考えています。

松葉 専用スーツを着るだけで楽しめる「テクノスポーツ」ウェア。面白いですね。

▼ 「HADO」を身体で表現してもらいました


新木 戦う「テクノスポーツ」だけでなく、魅せる「テクノスポーツ」もやりたいなと。例えば、身体の動きをセンシングして、プロジェクションマッピングの中を踊っているダンサーが、会場の映像や照明、音を全て自身でコントロールする。現状、ダンサーは操り人形状態でインタラクティブ性がほとんどない。映像が決まっていて、このタイミングでジャンプするなど予め決まった動きをしているだけです。それを、細かくスピーディにステップを刻み始めたら、併せて映像も激しく展開したり音楽もテンポアップするなど、ダンサーの動き主導で会場演出がなされるんです。言ってみれば、フィギュアスケートの新しいカタチまでいきたい。

松葉 VRの場合、360度映像をヘッドマウントディスプレイの中で見るだけと認識されている方がまだまだ多いのが実情です。企画的にはVR体験をする前と後も合わせて1つの体験として企画化することと、他の技術、センシングやモーションキャプチャなどと組み合わせて、新しい体験をもたらすことができると思います。

新木 また、ARは「テクノスポーツ」は、エクササイズや健康管理などにも使えると考えています。私たちのは腕にアームセンサーも装着するので、改良すれば心拍数や運動量なども計測できます。1プレイで消費カロリーが何キロだったと算出してヘルスケアに活かすとか。

松葉 いろいろな可能性が広がりますね。ぜひ一緒に取り組んでいきましょう!

 



 

プロフィール

新木 仁士

株式会社meleap CTO

2014年1月、世界を圧倒的に面白くするため、 福田浩士と共に株式会社meleapを設立。 現在はテクノスポーツHADOに専念。 モンスター戦、対人戦とラインナップを充実させながら日本各地で展開中。 2020年、東京でのテクノオリンピック開催のために世界展開を図る。 誰もが抱いた子供の頃の夢を数多く実現させるため、 飽くなき好奇心で日々を楽しむ。

プロフィール

松葉 忍

株式会社アマナデザイン
UXC事業部 ゼネラルマネージャー コンテンツプランナー / VRプロデューサー・プランナー

2011年アマナインタラクティブに入社。Webディレクターとしてさまざまなweb制作におけるプランニング、ディレクションを担当。2015年よりVRチームにも参画。Webに限らずデジタルにおけるプランニングをブランディング、マーケティング視点で行っている。ファッションデザイナーとSEの経験を持っており、アートディレクション、テクニカルディレクションもこなす。

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