STUDY2016.3.22

短め動画はアイデア勝負!お手本にしたい動画プロモーションSNSでどんどん拡散する、ヤマハが仕掛けた巧みな施策

 

インターネットやスマートデバイスの進化とともに、動画によるコミュニケーションは急速な普及を見せています。中でも、最小限の予算と労力にアイデアというスパイスを加えたショートビデオ(数秒〜3分程度)は、ネット時代に相応しい新たなマーケティング手法として見逃せません。そのショートビデオを活用したプロモーションのお手本になる、海外の代表的な事例を紹介します。
 

 


駅に設置したピアノを自由に弾いてもらう

紹介するのはヤマハのフランスでのキャンペーンです。ヤマハは、一般市民に自社製品のプロモーション動画を撮ってもらうという大胆な発想を、鉄道駅のコンコースで実行しました。「Concours piano dans 100 gares」と名付けられたこのキャンペーンは、直訳すると「100のステーションでピアノコンクール」という意味になります。そして文字通りヤマハは、フランス国鉄とのコラボレーションで100ヵ所の駅のコンコースにピアノを設置し、だれでも自由に弾いてもらえるようにしました。

日本でも、東京駅などでステーションコンサートが開かれることはありますが、演奏者はあくまでもそのために契約したプロフェッショナルが主体です。また、本来のピアノコンクールというものは、いくつかの審査や予選をクリアした人たちが、それなりの会場で競い合って勝者が決まります。これらに対して今回のキャンペーンは、だれもがふらっと立ち寄った駅で参加でき、演奏することで駅の利用者にも楽しんでもらえ、さらに上位入賞者にはヤマハ製ピアノが贈られるというものでした。
 

演奏風景を撮影した動画をみんなでアップ

2014年の半ばから180日間にわたって行われ、900人が参加したこのコンクールのポイントは、各駅での演奏風景をスマートフォンなどで動画として撮影し、専用のキャンペーンサイトにアップしてもらう点にありました。このようにすることで、隠れた才能を見つけ出せると同時に、さまざまな人がピアノ演奏にいそしむ様子を撮った映像がたくさん集まってきます。

そして、オンラインの映像のみならず、実際に駅でだれかの演奏を目の当たりにした通りがかりの人々も、自分のスマートフォンで撮影した動画をYouTubeやSNSを利用して、勝手に拡散してくれたのです。そうして優勝したのは、トゥール駅でハービー・ハンコックの曲を弾いた若い男の子で、大人顔負けの落ち着いた演奏を見せました。

出典:Jean, au piano de la gare de Tours, joue Herbie Hancock https://www.youtube.com/watch?v=Hkm3bRt_DGY

また、2位はリオン駅のピアノで応募したほぼ同世代の女の子。こちらも素晴らしい演奏技術を披露しています。

出典:musique du film intouchables, piano de la gare. https://www.youtube.com/watch?v=nid1ggx7F_c


ピアノの魅力がショートビデオを通じて多くの人たちに広まる

課題曲も演奏スタイル(ソロか連弾かなど)も問われない自由なコンクールのため、3位に入ったのは、パフォーマンス性が高く、ビデオもしっかり編集された2人の女性たち。曲の冒頭では何と一人がピアノの上に寝そべったままで演奏しています。普通の弾き方とは鍵盤の左右が逆になるにもかかわらず見事に弾きこなしている様子からは、並々ならぬテクニックが感じられました。

出典:DUO A MAINS NUES, GARE DE BORDEAUX https://www.youtube.com/watch?v=obAscbEx4fM

一応はコンクールなので、最終的な審査基準は、やはり演奏技術なのですが、実際には上手い下手にかかわらず、思い思いのスタイルでピアノを楽しむ様子が各地の駅で目撃され、撮影され、共有されることがヤマハにとっては重要でした。結果、このキャンペーンはFacebookで延べ13万5,000件の「いいね」と2,000件のコメントを集め、YouTubeなどの動画共有サイトでは計45万回の再生を達成し、ピアノの魅力の奥深さを多くの人々に知らしめたのです。
 

 


ネット動画は、低コストで制作や配信ができるとはいえ、それなりの長さと説得力のあるものを用意するのはハードルが高いと考えている方も多いはずです。でも、事例としてご紹介したショートビデオなら、アイデアさえあれば効果的なプロモーションを展開することができます。映像を取り入れた新たなコミュニケーション企画に、ぜひ役立ててください。

プロフィール

大谷 和利

テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー

デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。著書に『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(アスキー新書)。『iPhoneカメラ200%活用術』(枻出版社)、『スティーブ・ジョブズとアップルのDNA』(マイナビ)『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)、『ビジュアルシフト』(宣伝会議)、『ICTことば辞典』※共著(三省堂)など。

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