STUDY2017.7.25

VRの没入感はなぜ阻害される? 見落としがちな原因と対策体験者をがっかりさせないための、6つのポイント

日色 裕樹

株式会社アマナ
プロデュースDiv./VRコンテンツ戦略チーム所属 マネージャー

 

こんにちは。アマナの日色です。
 
テレビ番組などでもVRが紹介される機会が増え、同時に「没入感」というキーワードが取り上げられることも多くなってきました。
 
没入感とは、映像や音に熱中してその世界に浸っているような感覚のこと。別の言葉でいえば、自分がコンテンツの主人公になったような感覚、つまりVRの体験価値そのものを指しています。
 
ゲームでも映像作品でも結果的にうまくいかなかったVRコンテンツは、何らかの要因で没入感が削がれてしまっていることが少なくありません。
 
ではなぜ没入感は削がれてしまうのでしょうか? 制作と運用、2つの側面から見ていきたいと思います。

 

VRの没入感が削がれる要因<制作編>

1.低クオリティのCG・映像
まず挙げられるのは、VRコンテンツを構成するCGや映像そのもののクオリティの低さです。CGの動きがカクカクしていたり、テクスチャー(表面の質感)が粗かったり、デザイン自体が稚拙だったりすると、体験者はその部分が気になってVRの世界に入り込むことができません。
 
また実写の場合も映像のつなぎ目(ステッチ)の処理が粗いと、同様に没入感が削がれる要因になります。当然のことではあるのですが、VRの鍵となる没入感は丁寧なクリエイティブあってこそなんです。

2.解像度の低さ 
VRコンテンツでは360°すべての対象を体験者の主観で捉えるので、テレビや映画以上にブレやぼやけが目につき、それによって没入感が削がれてしまうことがあります。
 
解像度の低さは多くの場合、撮影に使うカメラと体験者側のデバイス(スマホ、VRゴーグルなど)のスペックの違いが原因です。高価なカメラで解像度の高い映像を撮影しても、表示するデバイスのスペックが低ければ再現することはできません。
 
「モニターで確認したときはきれいだったのに……」ということにならないよう、制作に取り掛かる前に必ず使用するデバイスを決めておきましょう。
 
3.レスポンスの悪さ
レスポンスの悪さも没入感を阻害する要因の1つ。自分の思うように反応しないコンテンツには熱中できませんよね。
 
コンテンツのレスポンスは、主にデバイスのディスプレイのリフレッシュレート(1秒間に画面を書き換える回数)によって決まります。リフレッシュレートの低い簡易的なVRゴーグルなどでは、体験者が激しく頭(視点)を動かしたときに表示が追いつかないことがあります。
 
こうした制作やデバイスに関する問題は、発注者側からするとクリエイター任せになってしまう部分が大きいかもしれませんが、360°映像と音を組み合わせるVRコンテンツは完成後の修正・変更が難しいので、制作会社とのやりとりの中で違和感を覚えることがあったら遠慮なく指摘しましょう。

VRの没入感が削がれる要因<運用編>

 

4.説明不足
現状VRコンテンツは展示会やイベントにブースを出展して公開するのが一般的です。せっかく質の高いVRコンテンツを制作しても、会場でのずさんな対応や運用ミスによって没入感が削がれてしまうことがあります。その1つが体験前の説明不足。
 
たとえば、サムスンのVR GearというVRゴーグルは上部にピント調整のためのダイヤルが付いていて、利用者それぞれが自分でピントを合わせる必要があるのですが、購入した人以外でこれを知っている人はほとんどいないでしょう。
 
そうした点を説明せずにVRゴーグルを渡しても渡された側は訳がわからず、何が起きているのかわからないままコンテンツが終わってしまうという事態になります。スムーズにVRの世界に入り込んでもらうために事前の丁寧な説明を心掛けましょう。
 
5.外部からの余計な情報
 まったく関係のない音楽が流れていたり、周囲の騒音がうるさすぎたりすると、体験者はコンテンツに集中できず没入感が削がれます。そういった点ではブースのレイアウトや導線などVR体験に適した環境作りも大切です。
 
また、余計な情報という意味では過度な説明もNG。4.との兼ね合いはあるのですが、VRゴーグルを装着してコンテンツが始まった状態で話しかけられると、体験者は外の世界に引き戻され、やはり没入感が削がれてしまいます。
 
これを避けるためにはブース内に操作方法のパネルを設置したりするのが効果的。あるいは長々と説明しなくても楽しめるよう、操作そのものを簡略化したり、できるだけシンプルな機能のVRゴーグルを使ったりするのも1つの方法です。

6.VRゴーグルを外した後の事務的な対応 
VRコンテンツを体験した人は、没入感が高ければ高いほどその余韻を引きずった状態にあります。その状態でブースからの退出を促されたり、事務的な対応をされたりすると一気に現実に引き戻されてギャップに戸惑ってしまいます。

コンテンツの世界と現実を、できる限りシームレスにする方法として、VRコンテンツの中で広がる世界を、コンテンツ終了後も体感できるようにすることが挙げられます。

たとえば2016年、パリを代表するファッションブランド「TARA JARMON(タラ ジャーモン)」のポップアップショップに合わせて、2016A/Wのコレクションテーマである「ECLIPSE(月食)」の世界観を体感できるVRコンテンツを制作しました。

体験者は暗い室内にてVRグラスを装着。映像がスタートすると、印象的な赤いドレスをまとった女性によって、夜の森から星空へと誘われ、最後はまばゆい光の飛び交う宇宙空間を抜けてVR体験は終了します。しかしVRグラスを外すと、直前まで見ていたようなきらめく空間が再現されている、というもの。VRコンテンツの中の世界を現実に再現することにより、より深い余韻を残す、効果的な体験型コンテンツとなった事例です。

 

没入感を急に冷めさせることなく最後までVRコンテンツを楽しんでもらう方法として、1つのヒントになるのではないでしょうか。

 

​VRコンテンツの没入感を高めるためにはコンテンツの制作だけでなく運用面に気を配るのも大切です。とりわけ展示会やイベントでのVRコンテンツ活用を検討されている方は今回の内容を参考にしてみてください。

プロフィール

日色 裕樹

株式会社アマナ
プロデュースDiv./VRコンテンツ戦略チーム所属 マネージャー

2007年アマナ入社。企業の広告キャンペーンのビジュアル・TVCM・Web・イベント等、プロデューサーとして幅広いコンテンツの企画・制作プロデュースを担当。

現在はVRコンテンツの企画・制作を行うプロジェクトを兼務し、VRコンテンツのプロデュースも行う。

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