COLUMN2017.9.21

【VISUAL INSIGHT vol.05】写真から手軽に印象的なイラストを生成するアプリBest3

 

テクノロジーライターの大谷和利さんが注目した、世界の先進的なビジュアルユースのトピックを取り上げる連載「VISUAL INSIGHT」。第5弾のテーマは、写真を絵画風のイラストにするアプリです。

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写真を絵画風に変換するアプリBest3

前回は写真や動画を引き立てるBGMの自動生成にスポットを当てたが、今回はストックフォトや自分で撮影した写真を見事な絵画風イラストへと変換し、Webページやプレゼンテーション、ドキュメントにいつもと異なる演出を簡単に加えられるアプリの個人的なBest 3を紹介する。

この種のアプリは、今もiOSデバイス(特にiPad)向けにリリースされることが多く、画面はiPad Proのものだが、水彩画風のイメージを作り出すWaterlogueにはWindows 10版も用意されている。
 
本稿は、それぞれのアプリの使い方解説ではなく、どのような画像に変換できるかを見せることに重点を置くものだ。しかし、どれもユーザーインターフェースはシンプルで、気軽にいろいろな効果を試してみることを推奨する作りとなっているため、迷うことはないだろう。
 
なお、Best 3となっているが、それぞれ方向性が異なるので、実際の順位はつけ難い。そこで、手法として身近に感じられそうな順番にしてみた。それぞれのApp Storeのダウンロードリンクは、以下の通りである。

 Waterlogue

     

 Distressed FX

120円(追加テクスチャーはアプリ内課金)
https://itunes.apple.com/jp/app/distressed-fx/id585702631?mt=8

各アプリを試してみる

 

それでは、筆者がインド取材の折に撮影した港の風景写真を使って、個々のアプリの実力を見ていこう。

今回紹介するのは、水彩画風に変換するWaterlogue、AI搭載を謳い動画の変換も可能なArtomaton、そして、独特のダークな雰囲気を醸し出せるDistressed FXである。

 

元写真として使ったのは、インドの商業都市、ムンバイの港の風景である。宮殿を思わせる建物は、同国を代表する高級宿泊施設の1つ、タージマハル・ホテルだ。


1)Waterlogue
簡単操作で、水彩画風に

まずWaterlogueは、写真を表示してフィルターの種類を選ぶだけという簡単操作で、雰囲気のある水彩画風のイラストが得られるツールである。筆のタッチを重視した変換のため、ディテールの描写は大まかになるものの、色の重なりやにじみ具合がリアルな結果が得られる。
 
コントラストが弱めの淡い感じの写真だと、変換結果も平板になりがちなので、そこそこコントラストのある風景写真やポートレートに用いるとよいだろう。

 

単純に「鮮やか」というフィルターを選ぶだけで、このような軽いタッチの水彩画風イラストに変換される。
 

別のフィルター(ここでは「旅行記」)を選ぶと、1つ前の変換結果と比較しやすいように、まずサムネールが表示される。
 

そのサムネールをタップすることで、大きいサイズでの変換が行われる。「旅行記」のフィルターは、やや色あせた懐かしい感じの仕上がりとなる。
 

効果を表現するのにフィルターという言葉を使ったが、Waterlogueの処理は単純な一括変換ではなく、実際にイラストレーターが描くような輪郭線を抽出し、その上に淡い色から濃い色へと水で溶いた絵の具を重ねていく手順を再現するようにして行われる。
 

  


2)Artomaton
さまざまな画材を使ったように変換できる

Artomatonは、日本のあるサラリーマンが独学でプログラミングを学び、5カ月ほどかけて作り上げたアプリなのだが、世界中で高い評価を受けている。
 
油絵や鉛筆、マーカー、木炭などの画材を選択すると、それを使った描画が始まり、十数秒で完成するという流れだが、同じ写真に同じ画材を使っても、毎回、微妙に異なる結果が得られるランダム性がポイントになっている。
 
無料で使える基本の画材だけでも結構楽しめるので、使ってみて他の画材も試したくなったら購入を考えるようにすれば無駄がない。
 
また、最近のアップデートで、こうした画材による効果を動画にも適用できるようになり、応用範囲が広がった。かつて一世を風靡し、ある年代以上の人には懐かしいノルウェーの3人組バンド、a-haの「テイク・オン・ミー」のミュージックビデオ<https://www.youtube.com/watch?v=djV11Xbc914>で用いられた鉛筆画によるアニメーション(このときには、実写をベースに本当の手描きによって制作された)を彷彿とさせるような作品を簡単に作れるようになったのである。

 

Artomatonは、さまざまな画材の特徴を捉えた変換処理が特徴で、やはり画家が絵筆を進めるように、線や色をストロークを伴って重ねていくことでリアルな絵画感を作り出している。これは、油絵風の変換を施した場合。
 

鉛筆画では、次のようなイメージが生成されるが、他の画材を含めて、ストロークの方向や長さが処理するたびに異なるため、同じ写真をベースにしても結果は常に違ってくる。
 

色鉛筆による描画は、このようになる。モノクロの鉛筆画を単純に着色したものでないことは、両者を比べてみるとよくわかる。
 

チャコールもまた、鉛筆画の線を太くしたのではなく、かすれやぼかしの入り方も固有のものとなっている。
 

鉛筆によるスケッチに水彩で着色したような効果を得ることもできる。
 

もう1つ、Artomatonの大きな特徴は、矢印で示した録画ボタンを使うと、元が写真であれば描画していく様子を動画として、また動画の場合には動画全体を絵画調のアニメーションとして、記録することができる点だ。
 

筆者が台湾で駅に電車が入ってくる様子を撮影した動画を、鉛筆画風のアニメーションにしてみた。1コマずつ自動的に処理されていくが、動画の長さによってはそれなりの時間がかかる点は致し方ない。

 

 

 

3)Distressed FX
ミステリアスな心象風景風にするなら

最後のDistressed FXはテクスチャーデザイナーが作っただけあり、他の2つのアプリとはまた異なる世界観を持っている。Distressedというアプリ名自体、「苦しみや苦痛を与えられた」という意味であり、できあがる絵柄も、ややダークでミステリアスな雰囲気になる。
 
だが、同時に味わい深いことも事実であり、重厚さが求められる高級品のビジュアルなどに応用するとぴったり当てはまるかもしれない。
 
鳥のシルエットを飛ばすことができるのも、他にないユニークな機能といえ、これもイラストに心象風景的なタッチを加える上で有効だ。

 

テクスチャーの専門家が作ったDistressed FXによる加工の考え方は独特で、全体の空気感(パレット上段)とキャンバスの質感(同じく下段)とを組み合わせて、絵の持つトーンを詰めていくような感じで調整を加えていく。
 

たとえば、pith(植物の髄や、動物の骨髄の意)という質感を選ぶと、立体的なシワが寄ったようなイメージになる。
 

続いて、Citrus(柑橘類の意)という空気感を選ぶと、周辺光量が落ち、全体に古びた感じになる。光量やコントラスト、ボケ具合などを細かく調整する機能もあるが、さらにユニークなのは、矢印の鳥のアイコンで呼び出す機能だ。
 

鳥のアイコンは、実際に空に鳥のシルエットをあしらうために用意されている。編隊を組んだり、群れをなして飛んだりと、複数のパターンから選択できる。
 

鳥のシルエットを追加すると、このような感じになったが、元から写っていた右の一羽の鳥と比べても違和感がない。
 

鳥のシルエットの位置やサイズは、タッチ操作によって変更できるようになっている。


オリジナリティのある画像を作るツールとして

このように、改変が許されている写真や動画であれば、これらのアプリを使うことで風情や雰囲気を大きく変えることができ、ストックメディアの使い方も大きく広がる。まずは、自分で撮った身近な写真を無料アプリでイラスト化してみてはいかがだろうか? きっと、その変身ぶりに驚き、いろいろな利用のアイデアが浮かんでくるはずだ。
 

プロフィール

大谷 和利|Kazutoshi Otani

テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー

デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。著書に『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(アスキー新書)。『iPhoneカメラ200%活用術』(枻出版社)、『スティーブ・ジョブズとアップルのDNA』(マイナビ)『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)、『ビジュアルシフト』(宣伝会議)、『ICTことば辞典』※共著(三省堂)など。

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