COLUMN2016.7.21

事実!トラブルが最も多い、建物の写真で気をつけるべき権利【写真の権利連載#3】これだけ押さえれば安心!

佐々木 孝行

株式会社アマナイメージズ
取締役

 

アマナイメージズの佐々木です。さて第三回のテーマは、広告業界で最も扱いがやっかいといわれている「建物」の写真についてお話したいと思います。
 
建物写真の何がやっかいなの?と思う方も多いと思いますが、長年に渡って写真素材の流通に係わってきた当社において、これまで最も多くのトラブルを引き起こす原因となった被写体が「建物」なんです。

 


建物の管理者から広告主に直接クレーム


具体的にどのようなトラブルが多いかというと、商品広告などに建物が写った写真を使った際に、「うちのビルの写真を勝手に使ってもらっては困る」といった内容のクレームが、直接広告主側に行ってしまって大騒ぎになるというパターンがほとんどです。クレームをしてきた理由を聞くと、「うちのビルの肖像権を侵害している」などという滅茶苦茶な理由(肖像権は人間だけがもつ権利)や、「使用する場合は、事前に申請をしてもらうことになっている」などという一方的な理由を述べてくる相手も少なくありません。さらには「許可料を支払ってもらう」といった、かなり強行な権利主張をしてくる相手もいたりします。
 
この問題については、以前から広告業界において撮影用小道具なども含む「モノのパブリシティ問題」、略して「モノパブ問題」というテーマで長年議論されてきた「目の上のたんこぶ」の一つです。
 
そもそも建物の著作権は法的にどのように保護されるべきで、建物を撮影した写真はどのように扱うのが正しい判断なのでしょうか。
 
実は著作権法に、大変重要な条文があります。 


 著作権法 第46条「公開の美術の著作物等の利用」

美術の著作物でその原作品が前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。

一  彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
二  建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
三  前条第二項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
四 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合



禁止行為として定められているのは、全く同じ意匠の建築物をつくる行為と、土産物のような複製物を作って、公衆に提供する行為だと明記されています。つまりこれ以外の目的であれば、自由な利用が著作権法で認められていて、写真を撮影することも、その写真を広告に使用することも、実は何ら問題ないということなんですね。
 
このことを知っているのと、いないのとでは、仮にビルの管理者側からクレームがきてしまった場合でも、対処がかなり違ってくるのではないでしょうか。相手側の主張は何の法的な論拠も無い、単なる「いちゃもん」に過ぎないのですから、本来全く相手にする必要はないということになります。
 
ただ、いくつか確認や注意をしなくてはいけないポイントもあります。

それは、その写真が建物所有者の敷地の中で撮影されていないか?いう点です。敷地内部での撮影であった場合は、建物所有者の「施設管理権」が優先される場合があるようですから、ここは要注意です。それと、写っている建物の著名度に、ただ乗りするような使い方(フリーライド)も問題になる可能性がありますから注意をしてください。

少なくとも町並みとして撮影されたような、複数の建物が並列に写っているような写真に関しては、何の問題もなく使用することができると思っていただいて良いかと思います。 
 

一方的なクレームは法律とは無関係にやってきます


さて、法的には問題がなくても、クレームはいつでも容赦なくやってきます。
実は各地のランドマークとなっているような有名なタワーや商業ビル、美術館や記念館、学校などの公共施設や大型のアミューズメント施設などのほとんどは、残念ながら自由な写真の使用を認めるスタンスには「ない」と言ってよいかもしれません。京都や奈良に代表される神社仏閣も、事前の使用許可にうるさいことで有名です。
 
これが冒頭でお話した、もっともやっかいな被写体である理由です。
 
どの建物や施設の管理者が、過去実際にクレームをしてきたかという情報は、なかなか入手しにくいものですが、当社の運営サイトamanaimages.com などは、作品詳細画面(プレビュー画面)に注意事項として記載されている物件もありますので、ぜひ参考にしていただければと思います。
 
一方で、先ほど述べたような敷地の内部で撮影した写真や、施設の内観を撮影した写真、あるいは、法的にも事前の使用許諾が必要な物件があるのも事実です。

海外の例では、夜間照明が点灯しているパリのエッフェル塔の写真などがあげられます。こちらは、照明デザインが著作権保護の対象になっているため、しかるべき許可申請が必要な物件です。

※夜間照明が点灯しているエッフェル塔の写真は、法的にも申請が必要

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使用したいと思っている建物の写真が、はたして事前の申請が必要なものなのかどうか、ぜひ一度、写真の提供元(販売元)などを通じて確認してみてください。

 

 敷地外から撮影された建物写真は、本来自由な使用が認められている。
しかし、物件によっては事前申請が必要な場合があるので必ず確認を。

 

最近はアマチュアカメラマンが数多く参加している「投稿型」のストックフォト販売サイトが増えてきました。その結果、商業目的での撮影が一切禁止されている物件の写真も数多くネット流通してしまっています。トラブルを回避するには、安全だという思い込みを一旦リセットして、面倒でも確認をとる以外ないかもしれません。

プロフィール

佐々木 孝行

株式会社アマナイメージズ
取締役

長年にわたりクリエイティブ素材の流通ビジネスにおける商品開発責任者を担当。世界中の著名写真家やクリエイターとの契約締結を数多く手掛ける一方、制作の現場で発生したさまざまなトラブルの解決を指揮。安全な写真の利用啓蒙を目的に、一般企業での著作権セミナーの講演や業界シンポジウムのパネラーを数多く務める。
株式会社アマナイメージズ

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