COLUMN2016.9.14

無印良品に学ぶ企業「らしさ」、一目で「MUJI」が伝わる理由直感で決まる、企業の「らしさ」を視覚化する効果的なフォトブランディングとは?

児玉 秀明

株式会社アマナビ 代表取締役社長兼学長
株式会社アマナ チーフ・ブランディング・オフィサー

出典:株式会社 良品計画

リンゴのマークから多くの人がiPhoneやiPadを連想するように、企業のロゴはブランドイメージをカタチ作るうえで大切な要素です。ただ、それだけでは充分ではありません。
 
SNSに投稿したたった1枚の写真によって、企業のイメージが大きく変わってしまうことがあります。逆に言えば、的確なフォトブランディングで一目瞭然に「この写真は、あの会社!」という印象を与えることができれば、非常に強いブランド戦略になります。
 
今回のテーマは「企業のフォトブランディング」。企業のイメージ調査で毎回上位にランクインする無印良品の事例を参考にしながら、効果的なフォトブランディングを探っていきます。

 

「最良の生活者を探求する」無印良品のフォトブランディング

無印良品は、食べ物や衣料品から家電、植物、家まで、7000品目以上のアイテムを取り扱っていますが、どの商品を見てもひと目で無印良品のものと分かります。無印良品の商品を手にすると、自然と「シンプル」、「ナチュラル」、「等身大」といったキーワードが連想されることもありますよね。
 
もちろんこれは、商品やパッケージのデザインが統一されている点も大きいのですが、フォトブランディングによる効果も見逃せません。無印良品では、オンラインショップの商品画像はもちろん、ブランドサイトやコーポレートサイト、SNS、広告の写真に至るまで、徹底的にイメージの統一が図られています。
 
例えば、下の写真は無印良品のブランドサイトのキービジュアルですが、ブランド名がなかったとしてもひと目で無印良品「らしさ」が伝わってきますよね。コーポレートサイトのビジュアルも同じようなテイストやトーンの写真で揃えられています。

全くジャンルの異なる商品でも写真のテイスト&トーンを統一し、見る人に同質のイメージ・温度感を届けることによって、無印良品のアイデンティティが視覚化されているんです。(こうしたフォトブランディングは、エモーショナルスケールによって検証することが出来ます。こちらについてはまた別の機会にご紹介したいと思います。)

出典:無印良品   

出典:株式会社 良品計画   


無印良品は「わけあって、安い」というキャッチコピーも有名ですが、初代アートディレクターの田中一光氏は、無印良品は良いモノを売るのでなく、「最良の“生活者”を探求するために生まれた」と言っています(株式会社良品計画 トップ対談 第三回より)

Webサイトや広告のすべての写真に、そのコンセプトを取り入れ、徹底的にテイストを統一することで、消費者の生活に寄り添う無印良品のブランドイメージが明確にカタチ作られているんですね。


撮影が変われば印象は変わる。フォトブランディングの注意点。

無印良品のように、WebサイトやSNSの写真のテイストを統一することによって、その企業ならではの「らしさ」=「アイデンティティ」が視覚化され、ブランドはより強固なものになります。フォトブランディングに取り組むにあたって、撮影や制作ではどんな点に気をつける必要があるのでしょうか?

まず欠かせないのが、コンセプトを明文化することです。明確なイメージを届けるためには、写真をどんなテイストで統一し、それによって何が伝わるのか、関係者内で共有しておくのが大切です。実際の撮影や制作に入る前に簡単なガイドラインを作成し、写真の共通コンセプトを記載しておくのがいいかもしれません。

コンセプトを言葉で表現するのはなかなか難しいものですが、迷ったときは「シソーラス」によって類語を書き出していくのも1つの方法です。「シソーラス」については、関連記事『「伝える」と「伝わる」はこんなに違う!心に届くビジュアル選び』で詳しく紹介しているので参考にしてみてください。

また、写真は見る人によって印象が変わるので、制作や撮影に関わる人が増えるほど、ギャップも広がります。写真のテイストに統一性を持たせるためには、最終的な仕上がりを判断する責任者をできれば1人に絞った方がいいでしょう

さらに、構図や撮影方法や撮影場所も大切なポイントです。例えば、下の無印良品オンラインショップのレトルト食品のページでは、商品によって若干の違いはあるものの、大部分が同じ構図と同じトーンの背景で撮影されていますよね?
 


イメージやコンセプトが明確でも、撮影場所や時間が変われば採光の具合も変わり、写真の印象は違ってきます。後からレタッチするのは手間も時間もかかるので、撮影方法と場所・時間は事前にある程度定めておくのがおすすめです。

 

企業のアイデンティティを視覚化させ、明確なイメージを届けることができるフォトブランディング。今回ご紹介した内容とあわせて、最後に少しだけ触れておきたいのが、ブランディングの「継続性」です。

世界的なブランド戦略で成功していると言われるコカ・コーラは、70年以上にわたってロゴの商標部分をほとんど変更していません。Appleのロゴも、配色やグラデーションの変更はあるものの、形そのものはそれほど変わっていませんよね。

消費者の動向やトレンドにあわせてブランド戦略を変えていくのも1つの方法ですが、当然、変われば変わるほど、それまで築きあげたブランドイメージは薄くなります。企業のブランディングでは、一度決めたイメージ戦略を簡単には変えない、継続する力も非常に大切な要素なのではないでしょうか。

プロフィール

児玉 秀明

株式会社アマナビ 代表取締役社長兼学長
株式会社アマナ チーフ・ブランディング・オフィサー

広告代理店のアートディレクターを経て1990年アーバンパブリシティ(現・アマナ)入社。以降アマナグループのコーポレートブランディングに携わる。2013年アマナビ学長に就任し、次世代のクリエータ支援を行う。現在はアマナビ・ビジネスとしてドローンスクール開催や楽天大学で「フォトブランディング」講座の講師、多摩美術大学グラフィックデザイン科非常勤講師など「教育」をキーワードに活動中。

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