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  • スナップ写真をコラージュする写真家・西野壮平さんの新しい試み
ビジュアルを創る人 | vol.23 2019.12.17

スナップ写真をコラージュする写真家・西野壮平さんの新しい試み

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旅をしながら撮影した写真をコラージュし、1つの作品を作り出す写真家の西野壮平さん。彼の作品は、約縦5×横3メートルという大きな作品を複写することで完成に至る。今まではカメラを使って複写していたが、今回初めて高精細スキャナー「LIAM」を使って作品を複写。彼の作品の背景とともに、最新のスキャニング技術について話を伺いました。

旅人目線で“移動”し、移りゆく風景をスナップする

写真家。1982 年、兵庫県生まれ。世界の街を歩き、撮影したスナップ写真をコラージュして作品を制作。国内外の美術館やギャラリーで展示を行い、高い評価を得ている。2018年には、イタリアで写真集『Water Line. A Story of the Po River』(DAMIANI)を出版。http://soheinishino.net/ Instagram:@sohei_nishino

──写真をコラージュして1枚の作品を作り上げるというスタイルになったのには、何かきっかけがあったのでしょうか?

西野壮平さん(以下、西野。敬称略):大阪芸術大学で写真を学んでいたとき、梅田近辺のビルやデパートの屋上から街を眺める“空中散歩”をするのが好きで、街の風景写真を屋上から撮っていました。その写真が溜まっていったので記録として、ポストカードサイズの紙に写真をコラージュして貼っていたんです。それを写真家の土田ヒロミさんに見せたら「これ面白いね」と言われて。それがきっかけで、『Osaka』という作品を制作。卒業制作展の学長賞を受賞し、国内外の街を訪れては作品を作るようになりました。

──元々写真をやっている人は、写真を使ってコラージュし、新たな作品にしようという発想はなかなか生まれない気がします。

西野:そうかもしれませんね。ただ僕は、小さい頃から絵を描くのが好きだったんです。だからなのか、写真を勉強したのち、撮ったスナップを自分視点で再構築し、コラージュするという絵画的方向にいったのかもしれませんね。

──作品の第一歩となる撮影は、事前に撮るものや場所を決めていくのでしょうか?

西野:いや〜。実は、特に決めてないんですよ。ただ決まってやることは、初めて訪れる街のローカルな床屋に行って髪を切ること。なぜかっていうと、床屋は地元の人が集まる、いわばネットワークの拠点だと思うんです。その土地を知るにはいい場所です。まあたまに、面白い髪型になることもあるんですが(笑)。僕にとってはその街に馴染むための儀式のようなものです。

──なるほど。まず床屋で街の雰囲気を感じて、街歩きをしながらスナップを撮るんですね。では1つの街にはどのくらい滞在しているのでしょうか?

西野:だいたい1カ月半くらいですね。それ以上いるとその街を知りすぎてしまい、旅人目線が薄らいでしまう。大事にしたいのは、その土地を訪れた“他者”の視点。それが作品作りには必要だと思っています。

──旅人目線で歩きながら撮ることが大事なんですね。

西野:そうですね。「歩く」「移動する」ことは、作品の重要な要素。ただ最近、街から少し視点が変わってきているんです。
街に定住することの意味ってなんだろうって考えていて。というのも、2拠点を行き来したり、定住しないという多様な生活形態を選ぶ人も増えていますよね。そこから、移動しながら暮らしている遊牧民に惹かれ、今、北インドの遊牧民とともに移動しながら写真を撮っているんです。彼らの暮らしの中に、現代人の“忘れたなにか”を発見できるかも、と。とはいえ、変わらず“移動”しながら写真を撮っているのですが。

2万枚の写真を1つの大きな作品に

──旅をしながら撮るスナップは、何枚くらいになりますか?

西野:最初に手がけた『Osaka』の作品は1000〜1500枚くらいでしたが、今では2万枚ほど撮っています。歩き、移動していく中で、人や食べ物など、目の前にある惹かれたものをキャッチ(撮影)していきます。

──2万枚の写真はすべて作品に使っているのでしょうか?

西野:基本的に撮ったスナップはすべて作品に使います。なので、作品はまさに僕の“足跡”ですね。ただ、2万枚もあるので正直、頭の中がカオスです(笑)。だからこそ、デジタルではなく、フィルムで撮影し、現像して、写真を切り、のりで貼っていくという身体的な作業を行いながら写真と向き合っています。それをすることで記憶や体験が蘇ってくるんです。

──膨大な数の写真をコラージュするのは、大変なように感じますが……。

西野:実は僕にとって写真をコラージュすることは、キャンバスに向かって絵を描く感覚に近いんですよ。写真1枚1枚がまるで絵の具のような感じで、写真を貼り合わせていくんです。

そしてできた作品は、必ず複写をして完成。というのも僕の作品の場合、写真1枚1枚を切って、のりで貼り合わせるので、その細かい作業の痕跡が残ります。作品のオリジナルを展示すると、見る人が作業の細かさや大変さに意識がいってしまうので、複写したものを展示しているんです。

作品の完成に欠かせない複写のウラに、最新スキャナーの技術

──西野さんの作品は複写して完成ということですが、具体的にどのように行っているのでしょうか?

西野:今までは高性能カメラを使い、作品全体を部分に区切ってライティングし、カメラで撮影して複写していました。でもこのやり方だとライティングもピントを合わせるのも結構大変だったんです。

今回は広告やアート作品のプリントディレクションを行っている「FLAT LABO」に高精細スキャナー「LIAM」があるというのを聞いて、エベレストに登ったときの作品の複写をお願いしました。

だいたいはモノクロなのですが、今回のエベレストの作品は、カラーでデータ化したんです。データ化する工程は、カメラでの複写とほぼ一緒。作品全体をスキャン可能な範囲に区切りながら複写していきます。ただ、このスキャナーは、LEDライトとレンズが同時に移動するので、一定のライティングを保ちながらスキャニングができました。

──そうなんですね。実際のスキャニング作業はいかがでしたか?

(左)縦約5mにもなる作品。(右上)高精細スキャナー「LIAM」と作品が垂直平行になるように調整している。(右下)実際にスキャニングしているところ。作品との距離は約15㎝と至近。ライトとカメラレンズが同時に移動するため、光ムラが一切生じない。

縦に大きな作品は、スキャンしやすいように横にし、西野さんのアトリエで行われた。

西野:事前にアトリエまで「FLAT LABO」の担当の方に来てもらい、一度打合せをしました。そのあとスキャニングを2日間かけて行いました。

スキャニングする際、作品に対してスキャナー「LIAM」を水平に保つことが重要なんです。特に僕の作品は大きいから、水平を調整するのに一番時間をかけたと担当の方が言っていましたね。実際のスキャニングも「LIAM」と作品の距離が10〜15cmととても近くで動いていてすごかったです。

──仕上がりを見たときの感想は?

スキャニングしてプリントしたもの。写真の重なりや細かなディティールまで再現されている。

西野:小さくプリントしたときに見えてくる細部の描写が、カメラでの複写よりさらにリアルに見えましたし、それによって作品全体が立体的に見えるんだなと感じました。今回のスキャナーは、2400dpi という超高解像度と聞いていて、そんなところからも細かなディテールを再現するクオリティが非常に高かったのではないかと思います。写真が重なっている部分や、貼りつけた時の、のりがはみ出ているのとかも見えているんです。細かなディテールを重視した作品をデータ化するにはぴったりですね。

──今回の西野さんの作品をみる機会や今後の作品作りについて教えてください。

西野:今回スキャンしたエベレストの作品は、来年2020年の4月にロンドンのマイケルホッペンギャラリーで発表します。さらに東海道をテーマにした25メートルにもなる巻物の作品も、2020年4月、東京の日本橋三越で発表します。
制作活動については、先ほども少しお話した遊牧民や道をテーマにしたプロジェクトも進行中です。

──2020年には、国内外で作品の発表が控えているので、この機会に西野さんの作品に触れてみてはいかがでしょうか。

テキスト:木林奈緒子 撮影:猪飼ひより(amanaphotography)

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