noteがコミュニティで支えるウィズコロナ・アフターコロナの企業情報発信

2020年4月にサービス開始6周年を迎えた、クリエイターと読者をつなぐメディアプラットフォーム「note(ノート)」。同サービスを提供するnote株式会社は、オンラインでの情報発信の機運高まるコロナ禍でどのような取り組みを行ってきたのでしょう。note事業開発担当の佐々木望さん、法人向けサービス・note proのカスタマーサクセスを担当する水野圭輔さんに伺いました。

既存の仕組みを背景に、スムーズにテレワークへ移行

note株式会社
“だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。“をミッションに、表現と創作の仕組みづくりをしているnote株式会社。文章、写真、イラスト、音楽、映像など多岐にわたるコンテンツを誰もが手軽に投稿でき、「クリエイター」と呼ばれる創作者と読者をつなぐサービス「note(ノート)」は、今や個人だけでなく多くの企業に情報発信の場として活用され、MAU4,400万人超、720万件以上(2020年4月時点)のコンテンツが集まっている。

——新型コロナウイルスの流行によって、できなくなった業務はありましたか?

佐々木望さん(以下、佐々木。敬称略):業務的にはイベント以外ほぼ影響を受けていないというのが正直なところです。noteはテクノロジーやクリエイティブで課題を解決していこうという思考を持っているので、さまざまな業務がすでにオンラインで進められていました業務連絡はSlackですべて完結していたり、ミーティングの議事録はGoogleドキュメントでとり、Slackに送られてきて、みんながコメントを入れて、それが指示書にもなります

PCや回線についてはコーポレートIT担当がかなり頑張ってくれましたが、テレワークに適した体制はもともとできていたこともあって、日常的な業務についてはコロナ前とほとんど変わらず運営しています。

佐々木望さん。

水野圭輔さん(以下、水野。敬称略):noteの法人向けサービスでは、1日に5〜6件商談をおこなっているんですが、1年前からほぼすべてオンライン会議で対応しています。僕なんか会社の隅っこの部屋に籠もってずっとZoomやっているものだから、「水野さんいたの?」って言われたりもしていました(笑)。それくらいもともとビデオ会議をやっていたので、テレワークにもスムーズに移行できました。

――なぜもともとオンライン会議が多かったのでしょう?

水野:社員の中には地方でテレワークをしているエンジニアもいて、オンラインツールを使う文化がもともとあったことが一つです。さらに、1日に何人ものお客様と会いたいのに、実際に対面するとかなり難しくなる。そんな都合もありました。

水野圭輔さん。

毎日開催で見えたオンラインイベントの利点

——貴社では新型コロナウイルスが流行する前、毎日のようにリアルイベントを開催されていたと思いますが、それはやはり開催が難しくなりましたか?

佐々木:そうですね。会社の中にイベントスペースが常設されていて、毎晩クリエイターのみなさんや企業のご担当者に登壇していただき、多いときは100名ほどのお客さんを集めてイベントをしていたんですが、それができなくなったのが一番大きな変化でした。

――どのようにリカバリーされましたか?

佐々木:noteは3月26日から全社完全リモートになったのですが、そのタイミングで「オンラインで毎日のようにイベントをやろう」と決めまして。みんな自分の仕事をやりながらも、全社をあげていかにWebに移行できるかを考えていきました。

急な動きではありましたが、もともとリアルイベントのときにオンラインで同時配信していたこともあって、完全オンラインの形にもスムーズに切り替えられました

――もともとやっていたというのは大きいですね。オンラインイベントならではのテーマや内容はありましたか?

水野:企業向けにZoomで公開カウンセリングをやらせていただいて、Twitterで LIVE配信しました。noteの活用について悩みを持った企業の方々に参加していただき、CXOの深津貴之と僕とでお答えするという内容でしたが、Zoom上で相談者が次々に切り替わっていくテンポの良さはオンラインならではだと思います。

水野:オフラインのイベントでは、誰かが手をあげるのを待つことがありますがオンラインは場面転換がスムーズですし、ゲストの方の参加はラジオに電話出演するくらいの気軽さがあるんですよね。こうした参加型のイベントは今後もあえてオンラインで実施してもいいかもしれません。

佐々木:オンラインに移行した当初はnoteから一方的に話すセミナーっぽい内容もありましたが、2ステップ目として登壇者がライトに参加できる公開カウンセリングのような形に、そして3ステップ目は視聴者の方が参加しやすいよう、ウェビナー機能を使って投票したり、チャットでやりとりしたり、ということも増えてきました。視聴者のみなさんがチャットやQ&Aに参加してくださり、僕たちがお答えしていくと、それ自体がコンテンツになるんです。ラジオで言うと、その場でハガキを読み上げているような感じ。オンラインでのコミュニケーションによって、視聴者の方を近くに感じるケースが徐々に増えていきました

また、水野が法人向けサービス「note pro」のお客様向けにオンラインで「note pro勉強会を実施したんですが、1週間前の告知だったにも関わらず200人以上集まりました。

水野:今回は「法人プランの契約企業限定、人数制限なし」というご案内をしたんです。なので、1社で30〜40人参加する企業もいらっしゃって。オンラインならではの気軽さがあるからこそ実現したことだなと思います。

――オンラインならではの強みを活かしたイベントのあり方ですね。

水野:もともといろんなことに対して柔軟に対応していましたが、この状況下でイベントのあり方やお客様との関係性の築き方はどんどん再定義し、アップデートしていってますね

先日新しいイベントスペース「note place」をオープンしたのですが、そこでもオンライン・オフライン双方を融合しながらやっていくつもりです。オンラインのいいところがたくさん見つかりましたし、今後もよりよい形を探っていくと思います。

ウィズコロナ、アフターコロナで顕著になる企業の課題

――先ほど公開カウンセリングのお話が出ましたが、さまざまな企業の方とお話ししていく中で、ウィズコロナや、アフターコロナに向けた悩みはどういったものがありますか?

佐々木:コロナの前からある話ですが、個人がどんどん情報発信しているので、企業発信の情報は埋もれてしまいがちです。企業は単なるアピールという形ではなく、いいコンテンツを発信したり、伝え方を工夫したりして消費者の方とつながらなければならないと思いますが、その流れがコロナの影響でより顕著になったんじゃないかと思います。

これまでオフラインで接してきた情報がたくさんあったのに、急にそのインプットがゼロになると、それまで当たり前に触れていたはずの情報でさえもまったく入ってこなくなります。これは個人的な経験ですが、常連のお店がテイクアウトを始めたことを気づくまでに2ヶ月くらいかかってしまったんです。テイクアウトをやっていても、その情報がほしい人に伝わらなければ気づいてすらもらえないんだなと実感しました。

これまで法人のお客様からのお問い合わせの3〜4割はnote活用の目的が採用関連でしたが、今はもっと広く「企業ブランディングのために」とか、「情報を発信する場がほしい」という形でお問い合わせいただくケースが増えています。

――水野さんはいかがですか?

水野:コロナ以前から、情報発信をしなきゃ、SNS使わなきゃ、と思っていた企業の方が増えてきていましたが、コロナ禍で加速したのは僕も実感しています。

あと、この状況での記事の見せ方にも悩んでいらっしゃる方が多い印象があります。インタビュー内容も大事ですが、写真をどう撮影するか、どんなものを使うかなども、工夫が必要ですよね。一方、コロナ前も後も変わらず聞かれるのは、「広く読まれるにはどうするか」、「どうしたら続けられるか」という内容です。

――ウィズコロナ、アフターコロナならではの情報発信については、どのようにアドバイスされているのでしょう?

佐々木:情報発信がうまい企業の方は、自社のテレワークの環境やノウハウを公開したり、クラウド会計ソフトのサービスを扱うマネーフォワード クラウドさんは助成金のまとめを作られていたりと、コロナの文脈をふまえた記事を作っていらっしゃいます。僕らもそれを参考にしつつ、困っていらっしゃる企業の方に「こうするといいですよ」とアドバイスさせていただいています。

水野:コロナ禍で読まれる記事っていろいろあるんですよね。この時期ならではの書類の出し方を書く企業もあれば、家での過ごし方をいろいろな観点で書いていく企業もある。バッグメーカーのエースさんは、思うように旅行ができなくなっている今、スーツケースを活用した収納術の記事を書いていたりとか。その企業やブランドならではの切り口のコンテンツに触れられるのは面白いなと感じます。

とはいえ、「どうコンテンツを作れば広く読まれますか?」という質問はもともと多いので、今挙げたようないい事例を掬い上げてシェアしていくことは変わらずやっていきます

――すでに発信されているいいコンテンツをみなさんが掬い、それをもとにアドバイスして、また新しいコンテンツが生まれる、といういいサイクルができているんですね。

佐々木:僕らのサービスは、メディアプラットフォームの提供だけでなく、note proを使っていらっしゃる法人のお客様によるコミュニティも含みます。なので、そこで成功されているお客様がいたら、僕らも勉強させていただきますし、それを参考にするお客様も出てくる。

企業の情報発信は一人で担当されている方も多く、他の業務との兼ね合いに苦心したり、相談先が社内で見つからなかったりすることもあるようです。そこに対して、note proがその人の帰属するコミュニティとなり、僕らも同じチームの一員としてサポートしている気持ちでいます。

水野:コミュニティマネジメントを行う僕らは、日頃から多くのコンテンツを見ておくことが大事です。我々はプラットフォームを提供しているので、お客様の代わりに書くということがない分、発信された情報はなるべく読み込み、見続け、その中から傾向を見つけたり、気づきをコミュニティへ還元していくのが仕事です。コロナ禍で、その動きはさらに加速していると感じています。

 


後編では、状況の変化に素早く対応し続けるnote株式会社のコーポレートカルチャーや、最近noteで投稿が増えている“社内をオープンにする”コンテンツについて伺います。

【関連特集】コロナ禍で変わりゆく企業のコミュニケーション

撮影[top / interview]:秦 和真(amana)
AD[top]:片柳 満(amana DESIGN)
文・編集:徳山 夏生(amana)

KEYWORDキーワード

本サイトではユーザーの利便性向上のためCookieを使用してサービスを提供しています。詳しくはCookieポリシーをご覧ください。

閉じる