ビジネスパーソンが美意識を鍛えるべき理由がわかる、オススメ本3冊

イラスト:高篠裕子(asterisk-agency) "

ビジネスパーソンにとって、美意識やアートシンキング(アート的思考)の重要性を説いた、おすすめの3冊を紹介します。発売から時を経ても新鮮な視点が光る、ビジネスパーソン必読の書籍ばかり。ビジネスに活きるアート関連本をぜひチェックしてみてください。

①「美しい」という知覚とは何か、とことん追究した名著

 

「これからのビジネスに必須な、アート的思考を養う本ベスト3」で、アート本ブームの火付け役となった、外資系コンサルタント・山口周氏の『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 』(光文社新書)を紹介しました。ではその「美意識」というものはそもそもどこから来るのか、つまりは「人が美しいと感じる知覚はどのように発生するのか」について、学術的な観点でなく、著者のごく個人的な体験からひもといた生活レベルでの考察を元に、とことん突き詰めた一冊です。

著者は、古典の現代語訳から小説・戯曲・評論・エッセイまで多彩な執筆活動で知られ、2019年初めに亡くなった、故・橋本治氏。

ある人には「美しい」がわかり、別のある人には「美しい」がわからない。「有名ブランドのものには目の色を変えて、有名ブランドの知識にも詳しくて、でも、ノンブランドの物に対してはいい悪いの判断ができない」という人、あなたの周りにもいませんか?「美しい」がわかるということは、美に関する知識の獲得ではなく、見たもの触れたものを自分で「美しい」と発見する能力であり、美は一般化できるものではない、と橋本氏は言います。

「人生に立ち向かわない美意識は、『美しい』の近くまで行って、『美しい』には届かない」

この言葉が深く胸に響きます。意識的に自身の「美しい」を知覚していくことで、世界はどのように開けていくのか。ものごとの価値の捉え方について、改めて考える機会を与えてくれます。

②美術鑑賞は、脳にどう作用するのか

書籍「エグゼクティブは美術館に集う」

『エグゼクティブは美術館に集う』(奥村高明著/光村図書出版) 表紙使用写真:© Elliott Erwitt/Magnum Photos エリオット・アーウィット/マグナム・フォト

 

一方、こちらは、美しいものに向き合ったときの脳の働きを、学術的なアプローチで解説したものです。本書の出版は、2015年。昨今のアートシンキングブームに先駆けて、美術鑑賞が人の思考や知覚に与える影響について、いち早く説いた書籍です。

著者は、美術教育や鑑賞教育を専門とし、学校教諭や美術館学芸員等のキャリアも持つ、芸術学博士の奥村高明氏。美術鑑賞がいかに人の創造性を高めるか、人がアートに向き合ったとき、実際に脳のどの部分が活性化してどのような反応が起こるのか、その具体的な作用についても、わかりやすく書かれています。

「大人には作家の思いがなかなか届かないのに、子供にはすぐ届く」。奥村氏も学芸員時代に、そう感じることがよくあったそうです。身の周りの世界がわからないことだらけである子供は、見るもの触れるものに対して自分の感覚で確かめ、自分なりに意味付けをし、評価付けをしていきます。子供にとっても大人にとっても“わからない”対象であるアートに向き合うことは、大人にとっては自身の知識や経験、ロジックの再構築の機会になっているのかもしれません。そこにこそ、創造的な解を求められるビジネスパーソンが学ぶべき、ものごとへの向き合い方のポイントがあるのではないか、と奥村氏は指摘します。海外のエグゼクティブが美術館に足繁く通うのは、ただ教養を高め、心地よい雰囲気を味わうためだけでないのです。

③企業のブランド価値を高める存在としてのアート

 

企業にとってアートコレクションとは、その企業の美意識の発露であるとも言えます。今でこそ、日本でもアートコレクションを持つ企業が増えてきましたが、この本が書かれたのは今から遡ること約30年前。著者は、政治・社会問題から経済、そして美術の領域まで、学際ジャーナリストとして幅広く活躍した、故・室伏哲郎氏です。1980年代、好景気に沸くアメリカを中心に本格化し始めた「企業による美術活動」、いわゆる企業のアートコレクションや展覧会等へのスポンサーシップ活動をブランディングに組み込んでいく、「CA(コーポレート・アート)」戦略について取材しまとめた本です。

取材先は、チェースマンハッタン銀行(現・JPモルガン・チェースの中核をなす銀行)、IBM、AT&T、フィリップモリスなど、先駆的にアートコレクションやアートスポンサーシップに取り組んできた、当時のアメリカを代表する企業群。アートを支援することで、企業の文化的・社会的ステータスを上げ、イメージアップを狙うと共に、作品をオフィスに展示または外部の美術展に貸し出すなどすることで従業員の帰属意識を高める、という発想です。

室伏氏がこの書籍を書いた当時、日本はバブル経済真っ只中。あらゆる業界でCI(コーポレート・アイデンティティ)改革が声高に叫ばれていた時代です。そんな中、世界的企業のスタンダードになりはじめた「CA(コーポレート・アート)」という新たな潮流について、先進国であったアメリカの現場を取材し、21世紀型の新たなブランディング戦略とはどうあるべきかを提言した、まさに遣唐使からの便りのような1冊です。

 

3冊に通底しているのは、「ものごとの価値をどう見るか」に関する視点の斬新さ。美意識やアートという文脈を通して、価値を捉え直し、日常を違った視点で見つめてみる。複雑化する時代において、そういう時間がいま、ビジネスパーソンにとって大切になってきているのかもしれません。

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