“自分ごと”で関心UP! パーソナライズされたWeb動画コンテンツを作るための視点

個人が好きな場所でいつでも動画を見られるようになった今、Web動画広告は、ターゲットに合わせてパーソナライズされたコンテンツを作ることが求められています。個々の興味関心を捉え、企業が言いたいことを伝えるパーソナライズされた動画は、どのような視点で作ればいいのでしょうか。株式会社アマナでWeb動画広告に携わるプロデューサー土井俊介が解説します。
なぜ、Web動画広告はパーソナライズするべきなのか
スマホが普及する以前は、動画広告(TVCM)は、家のテレビで番組と番組の間に流れるものでした。そのため、人気番組や、年齢、職業といった属性を分析し、ターゲットが好む番組にCMを流すことで、多くの人にメッセージを伝えられました。
そして1人1台、スマホを持つようになると、生活スタイルは多様化し、家族揃ってテレビを見る機会も減り、動画広告はテレビ以外にWebで見ることが増えてきています。
Webで動画を見ることは、スマホやPCを通して、複数ではなく“一人”で視聴するということ。つまり、自分の好きなものだけを選択して視聴できるということです。
そんな視聴環境にいるユーザーに対して求められているのは、“パーソナライズされた動画を提供する”ことです。パーソナライズされた動画とは、“いつ”、“どこで”、“どんな気分で” 動画を視聴するかを分析、想定して“自分のための動画だ”と認識させるような動画コンテンツを作っていくことなのです。
パーソナライズにはデータ分析とクリエイティブの融合が大事
では具体的に、パーソナライズされた動画とはどのようなことかを見ていきましょう。
図をご覧ください。みなさんの一日は、朝起きてから夜寝るまで、気分や興味関心が一定ではありませんよね?

たとえば、朝起きて雨が降りそうだったら、少し憂鬱になりながら天気予報をチェックしたり、満員電車では気分を変えるために音楽を聴きたくなったり、一日頑張った帰路にはちょっと1杯飲むためのお店を探したりと、置かれた環境や状況によって、気分や興味関心は常に変化します。
このような変化を理解せずに、やみくもにWeb動画を作り配信すると、ユーザーに響かず、効果を感じられないWeb動画広告になってしまいます。
つまり、「ちょっと1杯やりたい」と思っているときに、ダイエットを訴求するクリエイティブの動画広告が流れてきても「今はそんな気分じゃない」と感じてしまいます。ユーザーが動画に接触するタイミングによっては、受け取り方も大きく変わるので、コンテンツの内容と配信するタイミングをしっかりと把握してプランニングをしていくのです。
そこで押さえたいのが、ユーザーにかかわる“時間、場所、感情”のデータです。このデータは、動画を配信するプラットフォーム側と連携して精査することが必須になりますが、この3つのデータを分析することで、ターゲットの気分と興味関心を捉えたWeb動画のクリエイティブを作ることができ、ユーザーにも刺さる動画になります。
今までの動画広告のクリエイティブは、クリエイターの直感に頼る部分が多かったのですが、Web動画広告においては、データ分析とクリエイティブの融合が最大のポイントになります。
クオリティよりもユーザー視点のコンテンツを
パーソナライズを突き詰めていくと、動画のクオリティは、あまり重要ではなくなってきます。究極の話、スマホで撮影したものをWeb動画広告として配信してもいいと思うのです。というのも、先ほども述べたように、ユーザーは、一人でWeb動画を視聴します。
Web動画は、一緒に見ている人がいないので、見ている動画のクオリティに対してどう評価するべきかという、第三者の目を気にせず、自分の評価だけで動画を楽しめます。つまり、動画のクオリティはそこそこでも、自分が面白ければ、それでいいのです。
そのいい例がYouTuberの配信する動画です。更新頻度が高く、コンテンツの内容は面白いので、ユーザーはついつい見てしまいます。でもその動画のクリエイティブが高いかというと、そうでもないものもあります。
それでも人気があるのは、クオリティの高さよりも、更新頻度やコンテンツの内容が面白いYouTuberに対して、ユーザーが親近感を感じているから。親近感を抱かせるには、ユーザー目線でどこまで寄り添えるコンテンツかが重要で、ユーザーにとって、クオリティの質はそれほど重要視されるものではないということです。
クオリティの質は、BtoC限定ではありますが、その質の高さを突き詰めるよりも、ユーザーの視点に立って、面白く、有益なコンテンツになっているのかを見極めることがパーソナライズされた動画では重要になってきます。
まとめ
スマホ時代にユーザーに刺さるWeb動画広告を作るためには、コンテンツも配信のタイミングもパーソナライズを意識することが大切ということがわかりました。クリエイティブの質ばかりにこだわるだけでなく、ユーザー視点でコンテンツを複数作り、ユーザーの気分や興味関心の変化を踏まえて配信することで、より効果が感じられるWeb動画広告になるはずです。
インタビュー/園田菜々
写真/(c)Jordan Vanderzalm / EyeEm/amanaimages
デザイン・作図/下出 聖子(amana design studio)