写真好きのためのフォトコミュニティサービス「EyeEm」【「EyeEm」がもたらす革新vol.01】
ドイツ・ベルリン発の「EyeEm(アイエム)」は、撮影した画像をアップしたり誰かの投稿をフォローできるフォトコミュニティサービスです。マーケットプレイス機能がついており、リアルな表現力に富んだ作品が多く集まることから、企業ブランディングなどCtoCあるいはCtoBのプラットフォームとしても機能しています。
このようなフォトコミュニティを生み出せたのはなぜか。どうやって写真投稿のクオリティを磨きあげ、キープし続けているのでしょうか? EyeEm Mobile GmbHのCo-Founder(共同設立者)であるゲン サダカネさんとラムズィ リィズィックさんにお話を伺いました。
スマホで写真を撮る時代を見据えて
真っ青な空をバックに、地平線のない世界で舞い踊る女性の画像。
フォーキーな服をまとった男性が、森の中に佇む味のあるショット。
幾何学的に静物を切り取ったアーティスティックな写真————。
フォトコミュニティサービス「EyeEm」を覗くと驚くのが、そのすばらしい画像の数々です。世界150カ国2,500万人におよぶセミプロ、あるいはプロフェッショナルなフォトグラファーが参加。「EyeEm」には、既存の写真共有アプリや画像SNSとは一線を画すクオリティと共に、リアリティをまとった画像が1日2万点以上アップされています。
「EyeEm」が生まれたのは2010年のこと。前年にiPhone3GSが発売され、誰もが気軽に写真を撮影できるようになったタイミングでした。同時期、既存の広告のプラットフォームが、かつてほどプレゼンスを発揮しなくなってきたことも後押しに。テレビや雑誌、新聞のシェアはじわじわと視聴率や部数を減らし、一方で勢力を増していったのが、ツイッターやFacebookなどのSNSだったのです。
「カメラではなく携帯電話(スマホ)でとてもキレイな写真が撮れることに驚きました。世界のフォトグラファーにとって、携帯電話で撮影した写真を共有するプラットフォームがきっと必要になるんじゃないかと思いました」(ゲンさん)。
そこで、「EyeEm」のプロジェクトが始動。創業メンバーは4名でフォトグラファーでCEOのフローリアン マイスナーさん、テクノロジーを担うCTOにラムズィ リィズィックさん、プロダクト担当でCPOのロレンツ アッシュホフさん、大手広告代理店でクリエイティブ・ディレクターを務めていたゲン サダカネさんは、EyeEmのクリエイティブ・ディレクターとして、写真好きの4人がバランスよく異なる役割を担う形でスタートしました。
左から、ロレンツさん、フローリアンさん、ラムズィさん、ゲンさん。
4人は友人であり、共通点は「写真が大好きだ」ということ。4人に対する共感の輪は、まずアートプロジェクトとして広がりました。メンバー4人のコミュニティに「スマホで撮った写真を発表しないか?」と声がけ。集まった写真をベルリンの駅の通路、NYの地下鉄駅構内などにプリントして飾る展示会を実施したそうです。するとそれを見たフォトグラファーから参加希望が殺到。スマホで撮られたその写真を購入する人が現れ、アートブックにまとめると飛ぶように売れた———。
「携帯電話の写真が売れるとわかったし、このときに5,000人ほどのコミュニティが生まれました。写真を愛するみんなと一緒にネットでフォトコミュニティを作る。そうしたら、みんな喜んで利用してくれるかなと」(ゲンさん)
そしてピッチ(投資家へのプレゼン)を実施して5万ユーロを獲得した4人は、フォトコミュニティサービス「EyeEm」を立ち上げ。そこには、まさしく写真愛のある者だからこそ実装できた、知恵とテクノロジーが詰まっていました。

フォトグラファーのための、フォトグラファーによるコミュニティ
こうして始まった「EyeEm」は、今では2,500万人が参加する巨大なフォトコミュニティに成長しましたが、規模が大きくなるにつれて課題も出てきたとラムズィさんは言います。
「私たちは少人数のクリエイターとスタートしました。もちろん『EyeEm』を大きくしたいという気持ちがありましたが、多くのフォトグラファーから多くの写真が寄せられたときに、中には展覧会を開いたり本を出してお金を稼げる人が出てくる一方で、そうではない作品も集まるであろうことに気付いていました。すべての人に門戸を開きつつも、どうやってよい作品を効果的に見出すか、という相反する課題があり、それを乗り越える挑戦が必要だったのです」(ラムズィさん)

「EyeEm」https://www.eyeem.com/
写真そのものに対して、「いい」「悪い」「好き」「きらい」という評価を下すのではなく、クライアントごとに、また媒体やキャンペーンごとに、さらに「EyeEm」はフォトグラファーのためのフォトグラファーによるフォトグラファーのものだと心の底から思っているラムズィさんは、フォトグラファーをリスペクトしつつ、同時にビジネスとしてコミュニティをどのように大きくしていくかを考えなくてはなりませんでした。
そこで選んだのは、「テクノロジーを利用する」こと。
「私たちはアルゴリズムを開発する必要がありました。『美しさを判別できる』、『写真の中に何が写っているかを判別できることによってきちんとサーチ可能な』アルゴリズムを。さらに継続可能なシステムでなくてはならないので、このすべてを成し得ることにフォーカスして開発を進めました」(ラムズィさん)。
こうしてできたエステティック(画像審美)解析は、「EyeEm」側が適正だと判断した画像をAIに覚えさせ、投稿された画像を解析してランクの高いものが上位に表示されるシステムに。さらに、PA(パーソナライズド エステティック)と呼ばれる、個別のテイストやトーンを判断して、各クライアントに合ったイメージを判別するテクノロジーも自社で開発し、特許取得しているものです。

ラムズィさん。
「私たちはエンジニアによる大きなリサーチチームを作りました。ポイントだったのは、彼らがフォトグラファーにとても理解があること。1人だけが机に向かって決めているのではなく、写真が好きな気持ちを抱いたエディターやキュレーターもエンジニアと一緒に寄り集まってチームになったからこそ、フォトグラファーのためのテクノロジーができたと思います。基礎テクノロジーはできあがっていますので、今後はそれらの技術をよりビジネスにうまく活用していけるか、蓄積されたナレッジを生かしてコミュニティにとっても、クライアントにとっても効果的な運用を生み出していくことが現状の挑戦です」(ラムズィさん)。
AIを搭載したシステムによりクオリティの高い写真を上位表示することができ、さらに自動タグ付け機能によってよい作品が検索できずに埋もれないようになっている「EyeEm」。この仕組みを生かした新しい仕組み「Missions(ミッション)」がスタートしました。クライアントが「お題」を出して写真を募集、優秀作をクライアントのビジュアルコミュニケーションやブランディングに使うというものです。日本ではアマナイメージズが独占代理店として2018年4月にサービスを開始しています。この詳細については、【「EyeEm」がもたらす革新vol.02】にてお伝えします。
テキスト:箱田高樹
ラムズィ リィズィック | Ramzi Rizk
「EyeEm」共同設立者、CTO
2,500万人以上のフォトグラファーからなる「EyeEm」のコミュニティを、世界中のブランドや代理店とリレーションするプラットフォームを構築するエンジニアと開発者のチームを率いている。SNSのプライバシーを研究し、携帯電話とWebに対象を特化したエンジニアリングチームを率いてきた経験があり、情熱的なソフトウェア設計者である。
写真家、そしてピアニストでもあり、製品やアーキテクチャー、製品とエンジニアリングとビジネスが出合う魔法のような空間を愛している。
ゲン サダカネ | Gen Sadakane
「EyeEm」共同設立者、クリエイティブ・ディレクター
ドイツで生まれ育つ。TBWA、McCann、Jung von Matt、DDBやLeo Burnettといった広告代理店・制作会社にてデザイナー、クリエイティブ・ディレクターとして活動し、カンヌ広告賞の金賞(Volkswagen, Bosch他)を含む100を超える広告賞を受賞。