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  • 東京・渋谷の街のリブランディングを、東急電鉄が手がける理由
2019.05.08

東京・渋谷の街のリブランディングを、東急電鉄が手がける理由

村上 英司
株式会社アマナ クリエイティブディレクター
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渋谷ヒカリエから、建設中の渋谷スクランブルスクエアを望む。

再開発に伴う工事によって、常に変化している街・渋谷。渋谷のリブランディングを手がけているのが東京急行電鉄です。なぜ鉄道会社が街のブランディングを行うのか? そのポイントは? 同社で渋谷のまちづくりを推進する部署の浜本理恵さんにお話を伺いました。

2019年、渋谷の街が大きく変わる

2018年9月、渋谷駅南側エリアに渋谷ストリームと渋谷ブリッジがオープンしたばかり。2019年11月には、渋谷駅直上に地上47階建ての渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)がオープンする予定です。着々と新たな施設ができている渋谷のリブランディングについて、アマナデザインで企業のブランディングを手がけている村上英司がインタビュー。東急電鉄の思いとこれからの展開について聞きました。

村上英司(アマナデザイン/以下、村上):普段私はブランドのプロモーションや企業のリブランディングなど、企業の魅力をデザインすることに関わっていて、渋谷の街もクリエイティブな視点で今後どう変わっていくのか気になっています。御社が行っている再開発について、また、現在の状況を教えてください。

浜本理恵さん(東京急行電鉄/以下、浜本。敬称略):渋谷駅周辺の再開発でリーディングプロジェクトとなるのが、2012年に開業した渋谷ヒカリエです。続いて2017年には、原宿へ続くキャットストリートの起点に位置する渋谷キャスト、そして昨年は旧東横線渋谷駅のホーム・線路跡地とその周辺敷地に渋谷ストリーム、渋谷ブリッジが誕生しました。

東急グループが関わる駅周辺の再開発は進行していて、今年は旧東急プラザ渋谷の跡地を含むエリアに渋谷フクラス、駅直上に渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)がオープンします。これで再開発の全容が見えてきて、街の景色も変わってくるかと思います。

村上:再開発計画は予定のどれくらい達成したことになるのですか?

浜本: 渋谷フクラスと渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)の2つがオープンしたら、その次は2023年度に渋谷駅桜丘口地区の竣工、2027年度に渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期(中央棟・西棟)の開業に向け、工事は進捗していきます。

村上:渋谷周辺には恵比寿や代官山、原宿、表参道と魅力的な街が広がっています。これらの街との差別化は考えているのでしょうか?

浜本:いいえ、渋谷の強みはこれらの魅力がある周辺の街にも渋谷を中心に歩いて移動できることだと考えており、渋谷駅を拠点に周辺の街も楽しんでいただきたいという思いがあります。渋谷とそれぞれの街の中間地点に施設がオープンすることで、より街歩きを楽しんでいただけるようにしたいと思っています。原宿方面の渋谷キャスト、代官山方面の渋谷ブリッジなどがその一例ですね。渋谷ブリッジのオープンで、歩いて代官山に行く方が増えていると実感しています。

<PROFILE>浜本理恵 | Rie Hamamoto 東京急行電鉄株式会社 渋谷開発事業部 開発計画グループ まちづくり推進担当/2010年入社。鉄道駅係員研修等を経て、生活サービス部門でケーブルテレビ事業を担当。同時期に旧東横線渋谷駅の駅舎跡地を期間限定で活用する「ekiato(エキアト)」PJを担当。その後、東急パワーサプライにて電力事業・ガス事業の立上げに関わり、2018年7月より現職。

 

クリエイターやベンチャー企業が集う街へ

村上:歩きたくなる街という発想がいいですね。私も渋谷をよく利用しますが、渋谷ヒカリエが完成してから街の雰囲気が変わった気がします。昨年は「Design Scramble」というクリエイターと企業が交流できる面白いイベントがありましたね。最近、クリエイティブ関係のイベントが多く、私も渋谷に行くきっかけが増えました。これらの人々もターゲットにしているのですか?

浜本:そうですね。渋谷にオフィスを構える多くのITやベンチャー企業の方は横のつながりを求めているのでそうしたイベントも増えていますし、クリエイティブワーカーにとって魅力ある場所にしたいと思っています。

渋谷は若者の街というイメージが強いですが、実は働いている方もすごく多いんです。カジュアルな服装で街を歩くITやベンチャー企業の方が多いからか、若者の街と見えるのでしょうね。私たちは、渋谷はビジネス街でもあると考え、今回の再開発では新たに東京ドーム約6個分(約27.2万㎡)のオフィス床が供給されます。渋谷ストリームには元々、渋谷を拠点としていたグーグル合同会社の本社機能も戻ってきます。

2000年ごろ、IT系ベンチャー企業の起業ブームがあり、渋谷にこれらのオフィスが集中していたことからシリコンバレーをなぞって渋谷を「ビット(渋)バレー(谷)」と呼んだ時期がありました。昨年、渋谷を拠点とするIT企業により「SHIBUYA BIT VALLEY」プロジェクトが始動しました。私たちもこうした取り組みをお手伝いしていきたいです。

街のターゲット層を広げた理由とは?

村上:人脈が仕事につながることもあるので、横のつながりが大事なのは実感しています。やっぱりいろいろな人や企業がつながって一緒に成長していこうというのが今、テーマなのかなと世の中を見ているとすごく感じます。お話されていたように、渋谷を若者以外もターゲットとしているところに何か意図はあるのですか?

浜本:私たちは鉄道事業者なので、特定の方というよりはより広く、多くの方に来ていただきたいと思っています。再開発のテーマを「エンタテイメントシティSHIBUYA」としていて、世代、国籍、職業、嗜好問わずどんな方が来ても楽しいことがあふれている、楽しいことができるという、「日本一訪れたい街」を目指しています。

渋谷は文字通りすり鉢状の谷地形をしています。これまで、なぜファミリー層にとって過ごしにくかったのかを分析すると、谷底に位置する駅を中心にまち全体の動線が整備されていなくて、歩きづらかったことが挙げられます。今後、駅から周辺施設をつなぐ歩行者デッキと地下と地上をエレベータやエスカレーターで結ぶ「アーバン・コア」が整備されるので、だいぶ歩きやすくなると思います。

また、より多くの世代の人が魅力的に思う施設も増やします。今年10月に竣工する渋谷フクラス内にオープンする東急プラザ渋谷は成熟した大人をターゲットにしているんですよ。

村上:歩きたくなる街をキーワードに、最終的にはたくさんの人たちにとってもっと訪れたくなる魅力ある街になりそうですね。浜本さん個人では好きな場所はあるのですか?

浜本:私は渋谷ストリームからの渋谷川沿いが好きです。以前の渋谷川はあまりきれいなイメージはなかったかと思いますが、東京都・渋谷区と連携して川の整備を行いました。広場も整備され、居心地のいい水辺空間になっているんですよ。

やはり、東急グループだけでできることは限られているので、行政や事業者、地元の方々との連携を大事にしていきたいです。それが、結果的に渋谷に来てくれる方々に街を楽しんでもらうことになると考えています。

写真上2点は渋谷ストリーム、下は現在の渋谷川の様子。

 

企業が行うブランディングで大切なこと

浜本:村上さんは企業のブランディングを行うときにどんなことを大切にしているのですか?

村上:目指す方向性やビジョンであるCI(コーポレート・アイデンティティ)を大切にしながら、そこからその企業「らしさ」であるVI(ビジュアル・アイデンティティ)をどうやって作っていくか、という基本を押さえながら、その会社の魅力をしっかり共有してビジュアルを作っています。

クライアントと話しながら、共感できる魅力、ワクワクできるような部分を見出して、どんなカラーやイメージを与えると、ぱっと見でその企業「らしさ」が表現できるか、そういうところを意識しています。渋谷の再開発も、「日本一訪れたい、歩きたくなる街」というビジョンから、さまざまな魅力が混沌と点在する渋谷だからできる「らしさ」を活かすことで、より素敵的な未来につながりそうだと実感できました。

浜本:働く、遊ぶ、暮らすを融合する仕掛けを作って、渋谷全体を巻き込んでみんなが楽しめればいいね、と社内で話しています。

村上:それで「スクランブル」というキーワードが出てきているんですね。いろいろな可能性が混在している渋谷らしさのつながりが見えて、すごくワクワクしました。それでは最後に今後の展開について教えてください。

浜本:この再開発は何十年もかけて計画を作り、ようやく花が咲き始めたところなので、昔から担当してきた社員はやっと形になったと感無量のようです。今後もしばらく工事が続くので、未来はどんな街になるのか想像したくなる情報を発信し続けるのが大切だと思っています。

村上:そうですね。渋谷周辺の利用者にとって、この開発が自分事であると受け止めてもらえるような発信が大切なのかなと思いました。

アマナでも今社内のリブランディングを行っていますが、自分たちが未来のどこへ向かっていくか、当事者意識をなるべく多くの社員が持てるような仕組みやビジョンを作ることが大切だとちょうど考えていたところです。

建物でもイベントでも、会社でも「人」が作るものであり、そこで働き、遊び、暮らすのも「人」なので、他人事でなくてそれぞれが輝ける場所、成長できるような場所であると、より多くの人に共感してもらえるといいですね。今後の渋谷の街の発展を楽しみにしています。

 

テキスト:島村美樹(カリブー)  撮影:近秀幸(amanaphotography)

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