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  • 山口周さん監修のアート鑑賞プログラムに潜入! ビジネスに必要な「美意識」の磨き方
2019.07.18

山口周さん監修のアート鑑賞プログラムに潜入! ビジネスに必要な「美意識」の磨き方

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編集部
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東京・竹橋の東京国立近代美術館が、独立研究家で著作家の山口周さんを迎えて開催したビジネスパーソン向けプログラム「Dialogue in the Museum ービジネスセンスを鍛えるアート鑑賞ワークショップー」。ビジネスに必要な「美意識」を磨くために、なぜアート鑑賞が有効で、どのように取り組むべきなのか? 山口さんの解説と実践から探ります。

ビジネスパーソンの「美意識」を磨くアート鑑賞プログラム

東京国立近代美術館は、もっと広く多くの人にアートに触れてもらいたいと、16年前から、作品を見て感じたことを対話する「対話鑑賞プログラム」を実施してきました。専門知識がなくても自由に鑑賞できるこのプログラムは、子供から大人まで幅広い世代に向けて行われています。

今回開催したのは、「対話鑑賞プログラム」をビジネスパーソン向けに構成した内容。ベストセラーとなった『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書)の著者・山口周さんを迎え、ワークショップと特別講義が行われました。

上記の山口さんの著書では、ビジネスにおいてなぜ「美意識」が必要なのかが説かれていますが、どのようにして鍛えるべきかまでは詳しく解説されていません。本プログラムは著書の実践編として、アート鑑賞を通じて、ビジネスシーンに必要な「見る力」、「感じる力」、「言葉にする力」、「多様性を受け入れる力」を鍛え、「美意識」を磨くことを目指しています。

写真提供:東京国立近代美術館

なぜビジネスに「美意識」が必要なのか?

なぜビジネスシーンに「美意識」が必要で、アート鑑賞が「美意識」を磨くのに適しているのでしょう? その理由をひもとくには、今、何に価値があるかを考える必要があります。

近代以降、「正解を出す」、「ものを作る」、「利便性を上げる」といったことが社会的な価値となっていましたが、現代ではもはや価値ではなくなってきています。その反面、今社会で大きな価値を見出されているのは、「ロマンを作る」、「ストーリーを作る」、「懐かしさを生み出す」といったこと。今や当たり前となった価値はロジックやサイエンスに基づきますが、これからの時代、価値を生み出すために必要になってくるのは感性だと、山口さんは言います。

山口さん。

「『何が人の心に響くのか』ということを審美眼として持っていないと、これからのビジネスは成り立たなくなってしまう」と山口さん。商品を作るときや売るとき、何がもっともストーリーがあり、どこにロマンを感じてもらえるかは、事業内容を決めたり、商品を作ったりする人の審美眼に頼るしかなくなってきます。

では、事業の担い手や商品の作り手は、どうやってその審美眼を鍛えるべきなのでしょう? その答えは、「“素晴らしいもの”に触れること」だといいます。山口さんが考える“素晴らしいもの”とは、過去の人たちの心を動かしてきたもの。美術作品がその1つであり、たくさん触れて学ぶことで、何が人に響くか、響かないか、という審美眼を鍛えることにつながるのです。

山口さんから人に刺さる商品の例として挙げられたのが、日本の家電業界が下火になっている中、トースターで人気に火がついたバルミューダです。バルミューダの商品開発の判断基準は、代表の寺尾玄さんご自身がほしいと思うかどうか、かっこいいと思うかどうか。寺尾さんの「美意識」に則って作られたものは、海外でも販売され、ここ10年の売上増加率はなんと1000%……! なかなか聞かない数字です。

一方、マーケティング調査や消費者調査に頼る家電産業が成長しなくなってきたというのが、時代の変化を示しているのではないでしょうか。

「意味」が価値を生み出す時代へ

今、世の中で求められている価値は、「意味がある」か「役に立つ」のどちらかしかない、と山口さんは言います。「役に立つ」とは問題解決できること、「意味がある」とは「役に立つ」以外の理由のことで、ある人にとっては「意味がある」けれど、他の人にとっては「意味がない」場合もあり、捉え方は人それぞれです。「役に立つ」し「意味がある」ことに価値があるのは明白ですが、これからの時代は「役に立つ」けど「意味がない」ものよりも、「役に立たない」けど「意味がある」ものが求められる時代になっていきます。

では「意味」は何によってつくられるのかというと、「ロジックで説明できるものではない」と山口さん。世の中に対して何が刺さるかは、美意識や感性によってジャッジしなければなりません。これから価値のあるビジネスをやっていくためには、美意識を磨き、審美眼を育むことがとても大事になってくるのです。

ビジネスに必要な「美意識」の磨き方

ここからは、「美意識」を磨き、審美眼を鍛えるためのアート鑑賞ワークショップの内容を振り返ります。

まずアイスブレイクとして、美術作品をカードにした「アートカードセット(※)」を使ったゲームを実施。30名の参加者は5名ずつ6つのグループに分かれ、鑑賞ガイドスタッフの案内に従って、カードを使って自己紹介をしたり、スタッフが選んだカードを当てる「名探偵ゲーム」を行ったりと、アートを通じた対話に慣れる時間が設けられました。

※ 東京国立近代美術館、京都国立近代美術館、国立西洋美術館、国立国際美術館の所蔵作品から各13点ずつをカードにしたもの。日本作品に限らず、中世から現代までの絵画、彫刻、版画、写真、工芸など幅広いジャンルで構成され、自然と対話が弾む作品がセレクトされている。学校の授業や、美術館訪問前の事前授業、学校教員の研修などに活用されることを目的としている。一部の国立美術館ミュージアムショップで販売中。

「アートカードセット」には、作品名や作者などは記載されていません。写真提供:東京国立近代美術館

ゲームのあとは、グループごとに1時間強かけて館内の3つの作品を「対話鑑賞」していきます。その際、参加者の感性を引き出すために設けられたルールは次の3つ。

①作品のキャプションを読まない

②感じたこと、見えるものを言葉にする

③他人の意見を否定しない

作品名や作者、作品解説といったキャプションは読まず、自由に鑑賞し、感じたこと、見えたことを言葉にすることで、今まで気づかなかった自分自身の考えや、他人の見え方に気づくことができます。ここで大切なのは、他人の意見を否定しないこと。まずは受け入れて、自分はどう思うのかを考えることが大切です。このルールは、普段アートを見るときにも活用できますね。

では、「対話鑑賞」がどのように進められたのか、あるグループが鑑賞した1つの作品を例に見ていきましょう。鑑賞したのは、下の絵画作品です。1人の男性の肖像画のようですが、ここから何が見え、何が感じられるでしょう? まず参加者は作品のキャプションを見ずに、見えたこと、感じたことを言葉にしていきました。

はじめに参加者が発したのは、「目つきが悪い、」「じっと見ていると怒っているように見える」、「友達になれるかな? すぐにはなれないかもしれない」、「彼氏にすると面倒くさそう……」、「何回か会うと話せるようになりそうだけど、初めての出会いに気を使いそう」と、見た目から感じるネガティブさについてばかり。

しかし、話を進めていくと「話は面白いし、いろんなことを聞けそうだけど……」「なんだか引き出しが多そうだよね」、「一緒に飲みに行くとたくさん喋ってくれる人かもしれない」、「友達になれるかな? 言葉をかけると泣いてしまいそうだけど……。でも、友達にもなれそうな気がしてきた」と、次第に絵の中の男性に寄り添い、内面について話す人が増えてきました。

さらに話を深めていくと、「光の当たり方を見ていると、夕方のような雰囲気」、「穏やかなサーモンピンクにも見えてきますね」と、絵の中の男性だけでなく、色合いから受ける印象へと話が広がっていきました。

こうして男性の見た目、内面、絵全体の印象へと話が移っていったところで、鑑賞ガイドの清水与志絵さんから絵に関する補足情報が語られました。

清水さん「この絵は1920年に中村彝(つね)(1887-1924)によって描かれた『エロシェンコ氏の像』という作品で、モデルになった彼は、幼い頃に失明して全盲になったロシア人なんです」

その情報を聞いて、参加者たちはさらに絵についての感想を広げていきます。「目つきが鋭く見えたのは、怒っているわけではなく、見えないからだったんですね」、「そうすると、この人は目に見えないものが見えていたのかもしれない」、「研ぎ澄まされた内向性が表現されていたんですね」

最後に、清水さんから絵のモデルについての新たな情報と、参加者の考察力についてコメントがありました。

清水さん「エロシェンコさんは、繊細ながらも、休憩時間にりんごを丸かじりするワイルドな一面も見せていたそうです。作者は、その複雑さも感じ取って描いていたと思いますが、私が説明する前に、みなさんは感じ取ってくれていましたね」

時間に限りがあるため、絵画作品『エロシェンコ氏の像』についての対話鑑賞はここで終了しましたが、「対話鑑賞プログラム」の目的は答えを見つけることではありません。鑑賞ガイドスタッフに導かれながら、自由に考え、発想し、言葉にして対話する。そのプロセスこそが「美意識」を磨くことにつながるのです。

まとめ

アート鑑賞を通して「美意識」を磨くためには、まず作品をよく見て、自分の中に湧き上がる想いを感じ、言葉にすることが大切です。また、他者の意見を聞き、多様性を受け入れることは、新しい考え方の発見につながっていきます。

そしてもう1つ大切なのが、一度きりではなく、何度もアートの対話鑑賞を体験することです。継続することで「美意識」が鍛えられ、ビジネスにも活かすことができるのではないでしょうか。普段アートに触れる場面でも、「作品のキャプションを読まない」、「感じたこと、見えるものを言葉にする」、「他人の意見を否定しない」を意識してみてください。

また、今回の「対話鑑賞プログラム」は東京国立近代美術館で「所蔵品ガイド」として毎日14時から開催されています。ぜひ足を運んでみては?

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