Web動画広告を始める前に、企業担当者が知っておくべき基礎知識
Web動画広告を始めようと考えている企業の担当が直面する最初のハードルは、上司への説明やプレゼンテーションではないでしょうか。そこで、プレゼンを実のあるものにするために、アマナの赤井健二郎が6秒企画の中野達也さんと磯野伶央さんに“Web動画広告を導入する際の押さえておくべき知識とポイント”を伺いました。
“インストリーム”と“インフィード”の違いを知ろう
<PROFILE>中野 達也|なかの たつや(イラス右上)、磯野 伶央|いその れお(イラスト右下) 株式会社6秒企画 プランナー。株式会社6秒企画は、短尺に特化したWeb動画広告の企画・制作を行う会社。株式会社サイバーエージェントの子会社で、広告効果を最大化する6秒動画広告を得意とする。 赤井 健二郎|あかい けんじろう(イラスト左)株式会社アマナ プロデューサー。Web動画/グラフィック広告からLP制作まで幅広い制作物をプロデュース。最近のメインはWeb動画広告。サイバーエージェントの「6秒企画」と組んだ広告案件を多く担当している。
赤井健二郎(以下、赤井。敬称略):今回は、これからWeb動画広告を導入しようと考えている担当者が、Web動画広告で最低限、押さえておくべき知識やポイントについて話をしたいと思います。専門家のように深い知識は必要ないと思いますが、Web動画ならではの知識や考え方など、知っておくべきことはなんだと思いますか?
中野達也(以下、中野。敬称略):まず知っておくべきなのは、広告フォーマットの種類と違いですね。プラットフォームの回でも少し触れましたが、「インストリーム広告」と「インフィード広告」の違いは知っておくといいですね。
磯野伶央(以下、磯野。敬称略):そうですね。下記の図でおさらいしてみましょう。
磯野: YouTubeなどの動画コンテンツの冒頭や中盤で流れるWeb動画広告が「インストリーム広告」です。TVerやAbemaTVなどでも見かけますね。基本的には最初の5秒を強制視聴させ、その後にスキップボタンを表示し、ユーザーに視聴するか否かを委ねます。
なかでもインストリーム広告の1つである“6秒”の動画広告は「バンパー広告」と言われ、スキップされない代わりに、尺が6秒間と制限されていて、その尺内に企業側のメッセージを伝えていきます。
中野: そうですね。一方、「インフィード広告」は、SNS上に配信されるWeb動画広告のこと。これは結構シビアで、ちゃんとプランニングしないとスワイプされ、再生すらされない場合もあるんです。
赤井: 再生されないって制作サイドとしては悲しいですよね……。でも、暇つぶしで見ている人が比較的多いSNSユーザーにいかにWeb動画広告を再生させるかというのは、挑みがいがあるなと思っています。
磯野: 同感です。だからユーザーに刺さる動画にするには、最初の数秒をどう表現すればいいのかを考えるのが大事なんです。広告フォーマットによって作り方や課題も変わるので、難しい挑戦ではあるけれど、広告効果が出たときの喜びはひとしおですよね。
中野: そうですね。もうひとつ、大きな違いとしては、音を出して視聴する(インストリーム広告)か、出さずに視聴する(インフィード広告)かというのもありますよね。企業担当者が「インストリーム広告」と「インフィード広告」の知識があると、“誰に、何をどのように伝えるか”という、一番大事な戦略の部分に時間を費やせるので、制作側はもちろん、動画を作ってメッセージを届けたい企業側にとってもいいことだと思います。
作って終わりではない。運用まで考えて結果を求める
磯野: あと、Web動画広告は作って終わりじゃない、“運用”が必要だということを知っておいたほうがいいです。
赤井: そうですね。作って終わりではないんですよね、Web動画って。
動画を配信したら、数値を追って、見られない動画は差し替えていくなどの運用が必要。だから、メッセージが届いたと判断する基準、たとえば、「Web動画広告を全部視聴したらメッセージが届いたことにする」などのKPI(※1)をちゃんと定めておかないといけないんです。運用してPDCA(※2)を回して、より高い効果を出していくのがWeb動画広告の強みだから、そこは求めていった方がいいですよね。
※1:Key Performance Indicatorの略。最終目標を達成するための中間プロセスの状況を計るための指標。たとえば、新商品の認知を最終目標とした完全視聴率など。
※2:「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」「Action(改善)」で継続改善を行うサイクルをさす。
中野: その通りです。企業側もちゃんと結果を求めたほうがいいし、メッセージを届けるためにどのように運用するべきか、一緒に知恵を出し合えるといいですよね。
バズらないWeb動画広告の新しい視点
赤井: Web動画広告の基本的な知識について話してきましたが、知っておいてほしいことがもう1つあるんです。
それは、Web動画広告において“バズり”を作るのは難しいということ。というのも、「とにかくバズらせたい」というお題が企業の担当者からくるんです。バズるかどうかでWeb動画広告を作るかどうかを判断するのは、若干視点がずれているなと思うんです。
磯野: 確かに今の時代、Web動画広告で、バズらせるというのはなかなか難しいかもしれませんね。
中野: そうですね。昔はほとんどの人がテレビで同じ番組を見ていることが多くて、翌日学校で、あのドラマはどうだったとか共通の話題でみんなが盛り上がってましたよね。つまり、行動パターンや情報源がほぼ同じだったんです。
それが今や同年代の友人や一緒に生活しているはずの家族ですら行動はバラバラだし、一緒にテレビを見ることもないから、共通の話題もない。時代背景がバズるのを難しくさせているのはありますね。
磯野: ユーザーの嗜好も幅広くなっているうえに、同じサイトを見ていても人によって表示される広告が違うという状況ですから、なおさらですね。
中野:そう、 One to Oneマーケティング(※3)が進んだ結果ですね。僕ら3人でも見ている広告が違いますから。
※3:ユーザー一人ひとりに個別仕様のサービスを提供し、コミュニケーションを繰り返すマーケティング手法。
磯野: トレンド一覧も、人によって見ているものが違うし、流行を捉えるのは難しい時代になってきてます。でも、違う視点で考えると、ターゲットやメディアを絞ってきちんとプランニングすれば結果を出せるチャンスが大きいともいえますよね。
中野: そうそう。さらに、複数パターン作ったWeb動画広告の中で、どの動画が高い効果を得られたかなどは、測定することもできるし、そのデータを元にWeb動画自体の精度も上げられます。
運用してみて、ユーザーに刺さるWeb動画広告があったら、それをTVCMに展開する方法も、今後は施策として考えられるのではないでしょうか。
とはいえこの場合も、マスに届けてバズらせるのが目的ではなく、ちゃんとユーザーにメッセージが届いたという実績のあるクリエイティブとして、TVCMで流用するという意味ですが。
そういう、今まで当たり前だとされた発想から少し視点を変えて“動画”全体を考えてみると、新しい可能性が生まれてくるのではと思います。
まとめ
Web動画広告を考えるうえで一番大切なのは、もちろん“誰に、何を届け、どう行動させたいか”ということ。その目標を達成するための具体策として最低限抑えておきたいポイントは、インストリーム広告とインフィード広告の違いと、運用が大切だということ。運用することで、変化するユーザーの行動や環境にタイムリーに対応できるWeb動画広告は、これからの時代、広告の要になりそうです。
テキスト/安部朱美(bake30)
イラスト/Shapre
写真/(c)Kan Taengnuanjan / EyeEm/amanaimages
デザイン・作図/下出 聖子(amana design studio)