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  • 新型コロナ問題の本質はSDGsにある。地球で営む私たちが見直すべきこと
2020.05.19

新型コロナ問題の本質はSDGsにある。地球で営む私たちが見直すべきこと

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編集部
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ここ数年、取り入れる企業が増加し、日本でもようやく世間に広まりつつあるSDGs。しかしまだその取組みの必要性に気づいていない企業や、必要だとわかっていてもどのように取り入れればいいかわからない企業が少なくないのも事実です。そこで、今地球がどうなっていて、何を変えていかなければならないのか、SDGsを経営や事業に取り入れることによって企業は何ができるのかを、文化人類学者の竹村真一さんに伺います。

前編では地球や社会の現状を、今後2020年以降を語るうえで外せないテーマとなるであろう、新型コロナウイルス問題から紐解きます。

新型コロナ問題の本質はSDGsにある

2020年が明けて間もなく、世界中の話題をさらい、各国の経済活動にも大きな影響を与えている新型コロナウイルス。病原菌が発生した理由が追求されていますが、こうしたパンデミックを防ぐための本質的な課題はSDGsにあると竹村さんはいいます。

出典:「How food connects all the SDGs」by Stockholm Resilience Centre

「感染症の流行は環境問題とはまったく関係ないと考えている人も多いかもしれませんが、SDGsの15番目の項目『陸の豊かさも守ろう』と深く関わっています。

たとえば鳥インフルエンザは、もともと鳥と共生しているウイルスが鶏などの家禽と交配して感染したことによって起こったものです。なぜ以前から存在していたウイルスが感染症として流行してしまったかというと、野鳥の住処である湿地が減ってしまったことに原因があります。

残された数少ない湿地で野鳥が過密状態になったことで、溢れてしまった個体が家禽と接触し、ウイルスが移ってしまい、ヒトへの感染も報告されています。つまり、人間は自分自身で感染リスクを増やしているんです」

1971年に制定されたラムサール条約(※1)により一部の湿地は保護されてきましたが、工場や住宅を建てるための埋め立てや、インフラの開発などによって、この半世紀のあいだに世界の湿地の約50%が減少。感染症における病原体の多くは動物由来であるため、その生息地に人間が入り込むことによって、これまで接点のなかったウイルスにヒトが触れることになってしまいます。
※1…イランのラムサールで開催された国際会議で採択された湿地に関する条約。湿地の「保全(・再生)」、「ワイズユース(賢明な利用)」、これらを促進する「交流、学習(CEPA)」を目的としている。

「2014年頃に流行したエボラ出血熱も同様で、それまであまり手を出してこなかった熱帯雨林に生息するブッシュミート(野生動物の肉)をタンパク源として頼るようになったことで、動物の体内で共生的に住んでいたウイルスが変異し、人間に感染するようになりました。

さらに言えば、現在の無理な食肉産業の在り方も、ウイルスが変異し、リミックスしやすい環境になっている。今、自然生態系との距離感やバランスが大きく崩れているんです」

地球温暖化によって引き起こされる問題とは

生態系の破壊に深く関わっているもう一つの課題が地球温暖化です。年々気温が上昇していることは感じているものの、実際に地球の生態系にどのような影響を与えているかを認識している人はそう多くはないでしょう。

「この100〜150年で、私たちの二酸化炭素排出量は40%増えています。温室効果ガスを布団にたとえるならば、地球を包む布団の綿が約4割増えているということです。温められた結果、今の地球は平均気温が1℃ほど上がり、海氷を有する北極海などの高緯度地域ではそれが3〜4倍に増幅されて、最近は平年より20℃以上も気温が高い日が増えています」

出典:「Global Energy & CO2 Status Report 2018」by IEA

「さらに、温暖化によって10年で6kmほど動植物の生息域が北極・南極方向に移っている。10年で6kmということは、1年で600m、1日あたりでは1.7mということになります。つまり、毎日私たちの背丈分くらい温帯の生態系がどんどん北に移っている。そのスピードに動植物自体も、それらが生息する環境もついていけなくなり、結果ウイルスが変容し、これまで人間と縁がなかった病原菌までもがヒトに感染するようになる。

2014年に日本で流行したデング熱は、気候変動によって亜熱帯にしかなかった感染症が別の地域へ広がった例です。SDGsに取り組むこととウイルスの流行を防ぐことはまったく無縁ではないのです」

脆弱な都市システムが感染リスクを広げる

毎日確実に変化している地球の生態系に対応できないのは「“都市”というシステム自体がレジリエントでない」からだと竹村さんは指摘します。

「人間社会全体の免疫力が大きく低下している原因の一つが都市の人口爆発です。1964年の東京オリンピック当時、世界人口は約30億人でしたが、2020年現在、約78億人まで増加しました。今も年間約8千万人、1日あたりに換算すると23万人近く人口が増えていることになります」

出典:「World Population Prospects 2019」by United Nations

「しかも世界の半分以上の人口が都市に暮らしている。そしてその最大規模が東京であり、非常に効率のよい通勤システムを作って、何百万人を毎日都心と郊外へ運んでいます。すごいシステムですが、言ってしまえば非常に危険な感染カプセルにもなっているんです。さらに、高齢化が進み、人口構成の観点から見ても若い人が少ないという潜在的な脆弱性もあります。日本は最もレジリエントでない都市を作っていることになります」

出典:総務省「人口推計 -2020年(令和2年)4月報-」

「人を集中させることで効率化を実現してきた都市こそが、感染症の拡大やインフラの故障に対する大きなリスクになっています。SDGsの『住み続けられるまちづくりを』(11番)では、今後こうしたリスクの緩和が求められるようになるでしょう。

感染症は、都市文明が始まった5千年前からあり、ペストや結核やチフスによって、古代メソポタミアの都市や東ローマの都市、14世紀のベネチアが被害を被ってきました。公衆衛生や医療の発展で、ある程度は克服してきましたが、毎日人口が23万人増えるようなペースでは、少々の省エネや環境保護では追いつかないほど、地球に対するインパクトも都市のリスクも大きくなっているのです」

グローバリズムとシステム思考

また、新型コロナウィルスの世界的な感染爆発の背景には、世界各地にウイルスを持ち運んでしまう航空網の存在があります。グローバル化が進み、今や世界の空港の利用者数の総計は年間約13億人。つまり毎月約1億人が飛行機で世界を飛び回っています。便利な半面、世界が一蓮托生になっていることで大きなリスクが生まれていると竹村さん。

「産業面で言うと、先進国が中国に工場を集中させていることで、一国が止まってしまうと、全世界のサプライチェーンが機能しなくなるというリスクがあります。その小規模な例が東日本大震災で、日本にある工場が止まったことで、国内だけでなくインドや中国、アメリカでも自動車生産がストップしましたが、今回改めてそのリスクが露呈しました」

世界中の国や地域が密接に関わり合っているということは、遠い国で起こる災害や感染症の流行が自国に無関係ではないということ。そして、ある課題を解決しようと努めると、別の部分に綻びが見えてしまうというのも、現在の世界のシステムの欠陥です。

「エボラ出血熱を例に挙げると、そもそもブッシュミートを食べるようになったのは、食料危機があったからなんです。干ばつや気候変動の他に、ヨーロッパの違法漁船がアフリカの沿岸で魚を獲り、地元民が獲る魚がなくなってしまったことが要因として挙げられます。そうしてタンパク源が枯渇した沿岸の人々が、ブッシュミートに頼るようになった。

違法漁船がやってきた理由も、実はEUで『海の豊かさを守ろう』(SDGs14番)と漁業規制が厳しくなったために、規制の緩い場所を狙ったからでした。こちらを立てればあちらが立たずという現状を変えるために、全体的な視点で考えるシステム思考が求められています。私たちは生態系とのバランスを回復し、都市の脆弱性を解決して、グローバリズムをアップデートしていかなければいけない。それらをすべて象徴しているのがSDGsだと考えると、今こそSDGsなんです。

各国で少しずつ収束に向かっているように見える新型コロナウイルスの流行ですが、仮に収まったとしても、社会の在り方や人類と地球の関係性を変えていかない限り、また数年後さらに人口が増え、都市がさらに大きなリスクを抱えた状態で同じ悲劇を繰り返すことになってしまいます」

今、本気でSDGsと向き合うとき

SDGsがやっと主流化してきていた矢先、新型コロナウイルスの流行で『それどころではない』と思っている方も多いかもしれません。ですが、こうしてこれまでの私たちのやり方や、それに伴うリスクを振り返ると、SDGsが喫緊の課題だということを今一度思い出させてくれたのもまた、世界的なパンデミックではないでしょうか。表面上取り繕う、見かけばかりのSDGsではなく、本気で急速に取り組まなければならない目下の課題なのです。後編では、SDGsとビジネスをつなぐポイントを見ていきます。

【関連記事】ビジネスはSDGsで成長できる。持続可能な世界をつくるために企業ができること
【関連特集】企業から、世界を変える。SDGsの取り組み方

インタビュー・文/山田友佳里(@TbNyMd)  デザイン/下出聖子(amana design studio)
編集/徳山夏生(amana)

 

プロフィール

竹村 真一

1959年生まれ。京都芸術大学教授。Earth Literacy Program代表。東京大学大学院文化人類学博士課程修了。地球時代の新たな「人間学」を提起しつつ、ITを駆使した地球環境問題への独自な取組みを進める。世界初のデジタル地球儀「触れる地球」(2005年グッドデザイン賞・金賞、中型普及版は2013年キッズデザイン最優秀賞・内閣総理大臣賞を受賞)や「100万人のキャンドルナイト」、「Water」展(2007年)、「コメ展」(2014年)などを企画・制作。著書に『地球の目線』(PHP新書)、『宇宙樹』(慶應大学出版会)、『地球を聴く』(坂本龍一氏との共著;日経新聞社)などがある。

 

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