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  • 2022年コンテンツマーケトレンド予測:キーワードは「需要に寄り添うブランド構築と、コミュニティへの傾聴」(前編)
2021.10.26

2022年コンテンツマーケトレンド予測:キーワードは「需要に寄り添うブランド構築と、コミュニティへの傾聴」(前編)

大谷 和利
テクノロジーライター / ITジャーナリスト、AssistOnアドバイザー
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2021年9月29日~10月1日に米・クリーブランドで開催された、世界最大級のコンテンツマーケティングカンファレンス“Content Marketing World 2021”。これからコンテンツマーケティングに取り組むにあたり、おさえるべきポイントはどこにあるのでしょうか。海外のマーケティングトレンドに詳しい、ITジャーナリスト・大谷和利さんのレポートをお届けします。

Content Marketing Worldとは

Content Marketing Worldは、コンテンツマーケティングに関する国際的な教育&トレーニング組織のContent Marketing Instituteが、2011年から毎年秋に米・オハイオ州のクリーブランドで開催している、セミナーと展示会からなる統合的なカンファレンスである。

コンテンツマーケティングに特化したイベントとしては世界最大級。今年はウイルス禍の影響でリアルとバーチャルのハイブリッド開催ながら、9月29日〜10月1日の3日間にわたり、トップクラスのマーケティングリーダーたち225人からなるスピーカー、550社に及ぶ参加企業、会場には3000人を超える参加者が集い、最新情報を共有した。

Content Marketing World 2021開催の様子(提供:Wetzler Photography)

ここでは、コンテンツマーケティング関連の様々なテーマに沿ってプレゼンテーションやディスカッションが行われた中から、「2022年のトレンド予測」と「BtoBコンテンツマーケティングのこれから」という2つの観点で、複数のセッションをピックアップしてまとめたレポートを2回(前編・後編)に分けてお届けする。前編にあたる今回は、全体を通して来年のトレンドとなりそうなトピックをまとめて紹介していく。

ポッドキャストとウェビナーへの関心が高まる

最初に紹介したいのは、その名も”Content Marketing Predictions for 2022”(2022年のコンテンツマーケティング予測)というセッション。スピーカーはBtoBニュースソース企業Industry Diveのグローバルコンテンツスタジオ部門にあたるstudioIDの副社長、マット・マキュー氏である。

studioIDの調査によれば、アメリカ企業の上級幹部を対象にしたアンケート結果において、その67%が2022年にはコンテンツマーケティングのための予算を増やしていくと回答している。マキュー氏はこれを「我々(コンテンツマーケター)は金持ちになれる」と冗談めかして表現したが、給与には直接影響しないまでも、来年以降、コンテンツマーケティング施策が拡大していくことは間違いない。

studioIDの副社長、マット・マキュー氏によるプレゼンテーション。

またマキュー氏は、ブランド戦略が必ずしも即時的なセールスの増加につながらないことや、製品/サービスに対する需要の高まりが、そのまま市場における自社ブランドの存在感アップに直結するとは限らないことに言及。そして、そうした悩みを解決するために、これからのコンテンツマーケティングには”Brand to Demand”(需要に寄り添うブランド構築)が必要となると説く。

つまり、ブランディングを優先してコンテンツへのアクセス数や優良な見込み顧客が増加することに期待するのではなく、需要に応じてブランド戦略を変えることによって、その存在感が高まり、結果としてコンテンツの閲覧者やコンバージョンにつながるリードを増やせるというのだ。

実はマキュー氏自身、過去10年にわたって毎年のように、自分が関わるマーケティング施策の正当性を、上司に納得してもらうのに苦労すると告白したほど、コンテンツマーケティングの効果がROI(投資利益率)に直接反映されないことは、世界中のコンテンツマーケターを悩ませてきた。マーケター自身は、コンテンツマーケティングの特性をよく理解し、中・長期的な視点から施策を推進しているにもかかわらず、短期的な成果が得られないことで社内的に肩身が狭くなる場合があるという。

同じくstudioIDの調査で、対象となったマーケターの約1/3が、「上司はコンテンツマーケティングのアイデア自体に理解を示すものの、自社がそれを行う意味をわかってもらえない」と回答した。自分が最終的な責任者でない限り、この問題がつきまとう。

では、「需要に寄り添うブランド構築」は、どのように機能するのだろうか。

まず、自社ビジネスのターゲット層のニーズや興味の調査結果に基づいて作られたコンテンツ自体が、ブランドの醸成に貢献する。優れたコンテンツはSNSなどを通じてターゲット層の話題の一部として広がり、それに伴ってブランドの露出も増えていく。そして、フォロワーが増えれば、その数字を成果として社内に提示できる。

次に、ブランドと需要を結びつける役割を、それらのコンテンツに担わせる。これは、コンテンツ公開のお知らせや、内容を紹介するメールマガジンとニュースレターによって可能となる。ここで重要なのは、一貫性と規則性であり、たとえば、メールマガジンやニュースレターが決まった曜日に定期的に届けられることが、ブランドの安心感や信頼性につながっていく。ここでは、優れたコンテンツと引き換えに得られるメールアドレスの登録数やニュースレターの購読者の増加数などを、具体的な数字として示すことができるため、社内への説得材料となる。

さらに、そのことが波及効果を生み出して、リードによる自社サイトの閲覧回数が多くなって滞留時間も増し、リードが抱く疑問点や質問に関するやりとりに積極的に対応することで信用度が高まり、最終的なコンバージョン率も上がることで上司や上層部も納得するという流れが作られる。

そこで、2022年にはどのようなコンテンツ形式に力を入れるべきかという点だが、studioIDの調査結果によれば、マーケターの約半分がホワイトペーパーから遠ざかり始めており、6割がポッドキャストの増加を予想している。これは、レポートの後編記事でも触れる「紙の時代の情報の見せ方からの完全なる脱却」により、成熟するデジタル時代に即した情報提供のあり方に移行しつつある兆しと考えられる。先に公開された記事内でも、ポッドキャストの重要さに比べて採用する企業が日本では少ないことに触れたが、もしまだ自社で取り組んでいないようならば、2022年はそれを始めるのに、ちょうど良いタイミングといえそうだ。

また、ウェビナーに関してはウイルス禍の収束と共に利用頻度が減ると見る向きもあるが、依然として半数近くのマーケターが増加を見込んでいる。リアルなセミナーの必要性がなくなることはないものの、遠方からでも最小限のコストで参加できるウェビナーのメリットが浸透した今後は、リアルとバーチャルのハイブリッドな活用が行われていくことになりそうだ。

自身のセッションの締めくくりにあたってマキュー氏が強調したのは、「顧客や見込み顧客は、コンテンツへのアクセス数や『いいね』の数、その他の派手な数字で語られる無機質な存在ではなく、あくまでも人間であることを忘れてはならない」という点だ。そのため、BtoCやBtoBになぞらえて、コンテンツはHtoH(ヒューマン・トゥー・ヒューマン)であり、人にまつわるストーリーテリングが最も効果的だと指摘する。それは、studioID自身も2022年の課題に据えており、すべてのコンテンツマーケターが常に頭の片隅に置いておくべき前提なのである。

「コンテンツ・エコシステム」がマーケターを救う

コンテンツマーケティングの普及に伴って、今後、多くの企業がコンテンツ不足に直面することを指摘したのは、SkywordのCEO、アンドリュー・ホイーラー氏だ。同社は、Samsung、Neutrogena、Mastercardなどのコンテンツマーケティングを手がけているコンサルティング企業である。

ホイーラー氏は、”Freelancers, Flexibility, and the Future of Work: How Great Brands Are Scaling Their Content Operations in 2021 and Beyond”(仕事の未来における社外リソースの活用とフレキシビリティの重要性:優れたブランドは、いかに2021年以降のコンテンツ運用のスケールアップを考えているか)というタイトルのセッションを行い、激しく変化するこれからの社会では、優れたコンテンツを継続して提供できる企業のみが生き残れると説いた。

具体的には、今後、マーケティングにおけるコンテンツの需要が急激に拡大するのに対して、それを供給すべき社内のコンテンツチームのキャパシティが追いつかなくなる事態が発生する。ウイルス禍によって先行きが不透明になった市場の動向に、企業は柔軟に対処していくことが必要となる一方、それを社内の力だけで解決することは難しく、社外リソースの力を借りてコンテンツの運用をスケールアップしていくことになるというのが、ホイーラー氏の予想だ。

そのうえで、単発的なコンテンツを使い捨てるのではなく、ホイーラー氏が提唱する「コンテンツ・エコシステム・モデル」を基本とすることで、良質なコンテンツを継続的に供給することができるとしている。このモデルは、以下のようなカテゴリーから構成され、それぞれのコンテンツをバランスよく揃えていくことで、持続可能なコンテンツマーケティングが行える仕組みだ。

サーチ・コンテンツ:
見込み顧客が検索によって解決しようとする疑問の答えとなるコンテンツ

ファウンデーショナル・コンテンツ:
自社に関する基本的な情報や企業哲学などを提供するためのコンテンツ

ソート・リーダーシップ・コンテンツ:
自社が対象とする業務分野のオーソリティであることを独自の視点から示すコンテンツ

プロダクト・コンテンツ:
自社製品やサービスに関する説明を適材適所で行うことで効果を発揮するコンテンツ

カスタマー・コンテンツ:
問題解決のために何をすべきかのアドバイスなど、顧客の視点からエンゲージメントにつながると考えられるコンテンツ

例えば、債務管理問題に対する解決策を探している見込み顧客を想定した場合の「コンテンツ・エコシステム・モデル」。自社が債務問題に関して顧客に有用な情報を提供しうることを、サーチ、ファウンデーショナル、ソート・リーダーシップ、プロダクト、カスタマー、それぞれの切り口でバランスよく印象付けていく。

そして、より細分化された具体的なテーマごとに、コンテンツ・エコシステム・モデルに基づくコンテンツを、様々な形式やチャネルで整備していく。以下のように整理すると、カテゴリー別の色分けによってバランスがひと目でわかるため、現状では不足しているカスタマー・コンテンツなどを補うべきことが理解できる。

サーチ・コンテンツ:信用スコアを上げるためのハウツービデオ、信用スコアとは何かを理解するための徹底ガイド、優れた信用スコアについての解説ブログ
プロダクト・コンテンツ:4週間で信用スコアを改善できた顧客のカスタマーストーリー、信用スコア改善プログラムが機能する仕組みの説明
ソート・リーダーシップ・コンテンツ:アメリカにおける信用スコア平均値の調査データ
ファウンデーショナル・コンテンツ:それぞれに適した信用スコア問題解決法の提示

先のマット・マキュー氏が示したように、2022年のコンテンツマーケティング関連予算が増加しても、肝心のコンテンツが足りないとすれば、有効な施策を打つことはできない。今後予想されるコンテンツ不足を解消するためには、このようにシステマチックな方法に基づいて優良なコンテンツを制作し提供することが不可欠となっていくだろう。

共感を重視し、コミュニティの声を聴く予算を強化

企業と顧客のデジタルコネクションの構築をミッションとするSITECOREのシニア・デジタル・ストラテジストのジャクリーン・バクスター氏のセッションでは、”An Empathetic Revolution: Content, Communication, and Digital Active Listening”(コンテンツ、コミュニケーション、デジタル・アクティブ・リスニングによる共感の革命)と題して、アフターコロナのコンテンツマーケティングの在り方が提示された。

バクスター氏によれば、ウイルス禍によって停滞し、分断された社会の中で、顧客が最も求めているものは「共感」であるという。それは企業との関係においても同様で、個人でも会社でも、自らが置かれた状況に共感してくれるブランドに対して自らも共感を覚え、エンゲージメントが深まっていく。

バクスター氏は、現在の顧客がブランドに期待するのは、「自らに対して今まで以上に共感に基づく体験を与えてくれること」だと指摘する。

そのために企業に求められるのは、より強固な関係を築くための基盤となるブランドへの信頼感だが、うわべだけの共感では、持続可能な信用は得られない。綿密に設計されたコンテンツマーケティングによって自社のビジネス領域における問題解決能力を示し、それを一貫性のあるメッセージによって発信することが、顧客が必要とする共感につながるのである。

そして、共感を得るためには、その本質を知ることも重要だ。何かに共感することは人間に元々備わっている資質だが、自らの生き方や生活をより意味のあるものへと変えていくために欠かせない感情でもある。また、ある経験が自身にとって価値のある、本当に有用なものかどうかを判断する要素の1つにもなっている。

したがって、共感が得られたということは、相手の考え方や判断、方向性にも影響を与えうる可能性を手にしたことにもなり、これがコンバージョン率にも影響してくる。

では、具体的にどのようにすれば、顧客の共感を得て、これからのビジネスに活かしていけるのだろうか。バクスター氏は、その答えが、ターゲットとするコミュニティの声に耳を傾け、その課題や要望を徹底して理解するための投資にあるという。

また、すべてのコミュニケーションチャネルを通じて顧客や見込み顧客と一貫したやりとりを行い、知り得た課題や要望を我が事として考えながら、フィードバックを行なっていくことも大切だ。そして、思慮深く、しかし迅速に事にあたり、効果の出た施策は継続的に拡張し、そうではない施策からは何がいけなかったのかを顧客の目線で分析して学ぶ謙虚な姿勢も忘れてはならない。

マット・マキュー氏と同じくバクスター氏も、顧客や見込み顧客は数字などで示されるセグメントではなく人間であることを基本に据えることを強調した。その基本に立ち返り、ブランドの価値を真摯に伝えていくことが、これからのコンテンツマーケティングには求められている。

このように、最先端のコンテンツマーケティングは、人として顧客に向き合い、そのニーズを汲み取り、十分なコンテンツを揃えてそれに応えていくという方向に向かっている。

後編では、Content Marketing Worldのセッションの中から、特にBtoB分野のコンテンツマーケティングに関する情報をピックアップして紹介していく。

画像提供:Wetzler Photography
AD[top]:片柳 満(amana)
編集:高橋 沙織(amana)

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大谷 和利

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