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  • ナガオカケンメイさんが語る、地方ブランディングに必要な目線
ビジュアルを創る人 | vol.03 2017.06.02

ナガオカケンメイさんが語る、地方ブランディングに必要な目線

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D&DEPARTMENT PROJECTで代表取締役会長を務め、デザイン活動家のナガオカケンメイさん。地方にあるロングライフデザインの魅力を発信し、地域・地方を活性化するために、さまざまな取り組みをしています。その中で、ビジュアルはどのような役割を果たしているのでしょうか?

変わることを求められるストアスタイル

ーー「日本と世界のロングライフデザイン」と「地域のロングライフデザイン」を取り扱うショップとして、2000年から始まったD&DEPARTMENT。それから17年、今はどのような状況にあるとお考えですか?

ナガオカケンメイさん(以下、ナガオカ。敬称略):今年は、大阪のショップを移転するんですよ。元々はビルの老朽化が理由なんですけど、もっとコンパクトにしようと思っています。社会の価値観が変わって、路面店のあり方も変わらないといけなくて。

ーーどのように変わったと感じていますか?

ナガオカ:欲求にまかせて物を買う時代は終わって、ちゃんとした物を買いたい、それを長く使いたいという意識を感じます。今は、2020年の東京五輪を意識しながら世の中が動いていますよね。だから僕らも仮にその時代を目指して動いていくとしたら、20年前に作った路面店のスタイルを変えないと継続はしていかないし、物作りや物流が進化していく中で何を伝えていくべきなのかを考えなくては。大量にあって安くてすぐに手に入ればいいという物の対極に、100年、200年は使えるようなロングライフデザインがある。関係性や継続性を前提に、物を買うことを考えるようになっていくんでしょうね。

今回の大阪店の移転は、お客さんとの距離を縮めるのが目的。さらにこれからは「ちっちゃいD&DEPARTMENT」も作っていこうと思っていて、たとえば取引先のメーカーの方に店舗を1週間貸し出してその人や企業に運営してもらう。コンパクトにやるのがポイントなんです。

京都造形芸術大学との協業で、本山佛光寺の境内にある「D&DEPARTMENT」京都店 外観

富山県がパートナーとなり、富山県民会館内にある「D&DEPARTMENT」富山店 内観

時代の変化とビジュアルの役割

ーーお話を伺っていると、今という時代はコミュニケーションがリアルなほうに戻りつつある、という印象を受けます。そういうときに、ビジュアルはどんな方向にいくと思いますか。

ナガオカ:僕はグラフィックデザイナーなので、パッケージデザインにたとえて言うと、15年ほど前はデザインすればするほどおいしく見えなくなっていくデザインというのが多かった。業界の評価は得られるけど、一般の人から見ると「これは何だ?」と思うような。でも、おいしそうで、物のストーリーや歴史も伝えられるような、いわゆる適正なデザインというのが今は出始めてきていると感じます。

空間デザインもそうですけど、以前は憧れや流行があって、それになぞらえないとお客さんが来てくれない、雑誌にも取り上げられない、そんな状況がありました。でも今は人と人とのつながりが大事で、評価の基準は「友達がいいって言っているから」。雑誌とか広告とか、マスの評価なんてどうでもよくなってきているんです。

そんなときに、ビジュアルやデザインがどうなっていくかというと、やっぱり人と人との距離感でしか図ってもらえなくなる。「あそこのお店、おもしろいよ」って言ってもらえることが必要で、見た感じがなんだかカッコいいとか、お客さんとのコミュニケーションが取れていそうな店のデザインにするとか、それはもう無理なんじゃないかなあ。消費者側に経験値が備わってきていて本当においしいのかどうか本物を見分けられるようになってきたわけで、そんな時代のビジュアルやデザインは難しいですよね。

<PROFILE>ナガオカケンメイ デザイン活動家・武蔵野美術大学客員教授・京都造形芸術大学教授 すでに世の中に生まれたロングライフデザインから、これからのデザインのあり方を探る活動のベースとして、47の都道府県にデザインの道の駅「D&DEPARTMENT」を作り、地域と対話し、「らしさ」の整理、提案、運用を行っている。2009年より旅行文化誌『d design travel』を刊行。2012年より東京・渋谷ヒカリエ8/にて47都道府県の「らしさ」を常設展示する、日本初の地域デザインミュージアム「d47 MUSEUM」を発案、運営。2013年毎日デザイン賞受賞。 https://nagaokakenmei.com/

その土地ならではをどうやって見つけるか

ーー企業のブランディングも担当されていますが、その経緯を教えてください。

ナガオカ:長く続いている商品をD&DEPARTMENTで紹介販売してきたわけですが、その様子を見てメーカーさんが「商品の開発やパッケージデザインのリニューアルの仕事はできないの? あなたたちは変わらない物を続けて売っていくことが得意なんでしょ」と言われて、確かにそこにはすごく興味があるので仕事として受けることになりました。ロングライフデザインを販売してきた経験があるから、流行ではなく定番を求める人の傾向をアドバイスしたり、シンボルマークを作ったり品ぞろえの展開を考えたり。

(左)総合プロデュースを行った鹿児島県のコミュニティ型百貨店「マルヤガーデンズ」(右)今治のタオルメーカー「IKEUCHI ORGANIC」のデザインディレクションも手がける

ーー地方のブランディングもされているそうですね。その際に、大事にしていることは何ですか。

ナガオカ:その土地にしかない物を見つけること。「その土地らしさ」っていう解釈が必要です。

地方はこれまで、東京のデザイナーを必要以上に信用しすぎてきました。東京中心に活躍するデザイナーが地方に行って「先生」って呼ばれて、先生の言う通りに作ったらうまくいかないことも出てきた、ということが起こっているんですよ。つまり、東京のデザインが地方に合うかといったら、それは違う。その土地だけにある物を時間をかけて見極めることが重要だと思います。

地方の人は、地元の物をずっと見て育ってきているから、特別な物だと思わないですよね。それがその土地の個性なんですよ、とわかってもらうことも必要なんです。よくあるのが、土地の個性はわかっているんだけどたとえば地元の有力者なんかが「そんな個性はダメだ」って言い続けているから自信を失ってしまう。だからよそ者がやって来て「これはいい個性ですよ」って言うことで、その土地のよさをわかってもらう。

ーー都道府県ごとに作成されている『d design travel』は、まさにその役目を担っていますね。

『d design travel』バックナンバー

ナガオカ:これは、旅行のためというより、地方を知るためのガイドブック。その土地にある物、いわばそこに落ちているような物をそのまま写真で切り取って載せています。トリミングもしないし、だから「写真の下手な雑誌」ってよく言われる。僕が撮ってるからしょうがないよね。

地方ごとのよさを見つけるには時間がかかるし、地元の人が打ち出したいのは実は隣の県や他の町のヒット作の二番煎じだったりする。いやいやそうじゃなくて、もっと時間をかけて探してみようって働きかけると、自分達が問題視していたことや絶対に可能性がないと思っていた中に、個性として光っていたりする。それは、その土地との関係性がないと見せてもらえないし、関係性を作るには時間がかかるんですよ。

今僕は、沖縄、京都、東京、静岡の4カ所に滞在できる拠点があります。こうして地方に通い、しばらく滞在していると、当然今まで気付かなかったことに気付くから、まず自分のためになる。それだけじゃなくて、現地の人にも影響がある。そこに住んでいる人は、その土地を変えられないことが多い。問題がどこにあるかわからないこともあるし、問題があるかすらわからないことも。だけどよそ者と一緒に何かすることで、自分達のことがわかってきます。そこに生まれる関係性が大切なんです。

『d design travel 愛知』紙面の一部

2017年7月7日(金)全国発売となる『d design travel 静岡』増補改訂版の表紙

進化するD&DEPARTMENT

ーーD&DEPARTMENTの今後の展開について教えてください。

ナガオカ:これまで、ロングライフデザインを広める活動をしてきましたが、世の中に多少は広まったなという手応えもあるし、他にもそういうお店は増えています。もうD&DEPARTMENTの役目は終わったからお店を閉めるという選択肢もあったのですが、一方で新しいロングライフデザインみたいな感じの物を作っていかないといけないなあとも思っています。

物を買わなくなったと言われますが、時間をかけてちゃんとした買い物をしたいという気持ちはあるはず。だから、1つの物を買うのに何日もかけて検討しているような人に会えるお店にしたいと思っていて、それでコンパクトな店舗にも挑戦することに決めました。もう1つは新しい業態―レンタル、たとえばソファのように、高い価格ですぐには決められない物をレンタルして、まず使ってみることができる新しい買い方を考えています。

物流や物作りが進化していく中で、もうスタイルだけではやっていけないとも思っています。ただ、僕らの根っこはやっぱり変わらずに続いている物。だからそれをなるべく変わらないように変えて、これからの新しい時代に続くようにするにはどうしたらいいかを考え続けています。

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