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  • 2017年度 「グッドデザイン・特別賞【ものづくり】」に選出。水資源への問題意識を喚起したデザインとは(TBM)
見える化チャレンジ | vol.04 2018.03.23

2017年度 「グッドデザイン・特別賞【ものづくり】」に選出。水資源への問題意識を喚起したデザインとは(TBM)

片岡 圭史
株式会社アマナ アカウントディレクター/プロデューサー
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石灰石から紙やプラスチックの代替となる新素材「LIMEX(ライメックス)」を作り出し、国内外から注目されているベンチャー企業、TBM。2017年度のグッドデザイン賞では、同社のプロダクトである「LIMEX名刺」が「グッドデザイン・ベスト100」に選出され、さらに「特別賞【ものづくり】」を受賞しました。

 

グッドデザイン賞に応募したプロダクトとビジュアル制作を手がけたのは、電通のアートディレクター・小野恵央さん。新素材で作られた名刺と名刺入れの魅力を伝えるのに、どのような見せ方を心がけたのでしょうか? TBMの執行役員でコーポレート・コミュニケーションを担当している笹木隆之さんと、ビジュアル制作を担当したアマナの片岡圭史の3名に、語っていただきました。

名刺もケースも、循環可能な「LIMEX」で制作

ビジュアルシフト編集部(以下、編集部):「グッドデザイン・ベスト100」への選出、おめでとうございます。応募への経緯をお聞かせください。

笹木隆之さん:(TBM/以下、笹木。敬称略):TBM は、2016年にアメリカでベンチャー企業を育成するアクセレーターの1つであるPlug and Play で、「世の中に最も社会的影響を与える企業――ソーシャルインパクトアワード」を受賞しました。2017年には、先駆的なイノベーションを行う日米の優れたベンチャー企業を選出する日米イノベーションアワードにおいて「イノベーションショーケース」を受賞しました。このアワードは過去にテスラやメルカリ、LINE などが受賞しているんです。TBMが企業としてこれだけの賞を受賞したなら、やはりプロダクトとしてのLIMEXも評価を受けなければいけないと思いました。これは自分のミッションでもあり、TBMとしてのミッションでした。

編集部:2017年度のグッドデザイン賞には4400もの応募があり、そのうち受賞したプロダクトは1300。その中から、LIMEX名刺は「ベスト100」に選出され、さらに「特別賞【ものづくり】」も受賞しました。

笹木:LIMEX名刺はLIMEXとしての製品化第1号だったので、何としても取りたかったです。名刺ケースのデザインを手がけてくれた小野さん、転職した頃から長くTBMのビジュアルイメージやブランディングを担当してくれた片岡さんをはじめ、これまで時間をかけて応援してくれた人達への責任もありましたから。名刺とは、仕事を行う上で最初のコミュニケーションツールとなるものです。特に日本では最も多く使われるビジネスツール。「特別賞【ものづくり】」も受賞できたのはうれしかったです。

編集部:名刺そのものも名刺ケースもLIMEXで作られていますが、名刺は白い厚紙のような素材、ケースは半透明の柔らかいプラスチックのような素材です。デザインを手がけたのはアートディレクターの小野恵央さん。笹木さんとは電通の同期だったそうですね。

笹木:2016年にLIMEX製の名刺を商品化することが決まりました。ケースも含めた商品デザインを信頼できるデザイナーに託したかったので、小野さんに声をかけたんです。彼は海外でもたくさん賞を取っている人だから、そんなスゴいデザイナーに依頼するのは緊張しましたよ。

小野恵央さん:(電通/以下、小野。敬称略):LIMEXという素材のポテンシャルをしっかりと伝えることが課題だと感じたので、ケースは半透明にして、中身の減り具合が見えるようにしました。ケースには10の目盛りが印刷されていますが、この1目盛りは水1ℓを表します。LIMEXは水をほぼ使わずに作れる素材なので、名刺を使うたびに水資源の問題を直感的に想起できるよう工夫しました。

笹木:すぐに「これはいい!」と思いました。クリエイティブの力で製品力を伝え、付加価値を与え、さらなる可能性を作り出してくれた。クリエイターと仕事をすることは、こうした過程を分かち合えることがおもしろさだし、ワクワクしますよね。

片岡圭史(アマナ/以下、片岡):私は、笹木さんが電通の未来創造グループ(現電通ビジネスデザインスクエア)にいた頃からのお付き合いです。未来創造グループの活動は「単なる広告制作の枠を超えている」という印象を持っていました。企業イメージの構築や製品のプロデュースまでをトータルに手がけ、事業そのものにプランナーとして深く関与するのです。その頃に身に付いたアプローチ法が、LIMEXの製品化に当たっても非常に効果的に働いていると感じます。笹木さんは、当時から小野さんに仕事を頼んでいたんですよね。

笹木:小野さんは事業の方向性をきちんと理解し、懐に入り込んで、表現につなげてくれますから。さらに、「違うことは違う」とはっきり言ってくれるので、企業側もクリエイティブの過程を理解できる。小野さんにはTBMの立ち上げのときからお世話になっており、LIMEXのブランディングにも長く関わってもらっています。

アマナ制作のツール。

水の表現にこだわり、素材感をリアルに伝える

編集部:このLIMEX名刺をグッドデザイン賞に応募するにあたり、ビジュアルの撮影をアマナに依頼していただきました。

小野:今回の課題は、LIMEX名刺を使うことは地球の水資源を守ることにつながる、水の使用量を大幅にセーブできるのだ、というメッセージを的確に伝えることでした。片岡さんにアイデアを伝えたら、スタジオも水槽もすぐに手配してくれて、物事がパパッと進んでいって、思い通りの撮影ができました。

ただ、色調整には時間を要しました。LIMEXのビジュアル表現では常に、素材である石灰石を想起させるために白・グレー・黒のモノトーンを基調としています。LIMEX名刺もできるだけニュートラルに伝えることが課題でした。

片岡:水の手前に白い製品があるので、これを引き立たせるために背景は青味を強く出したほうがいいのかどうか、とても悩みました。LIMEXは未来感がある素材だし、地球の環境問題へ意識を向けるためにも、青を強調して透明感を表現することは定石かもしれません。しかし、できるだけ白・グレー・黒のモノトーンを守りたかったし、LIMEXの素材感をそのまま伝えたかったので、レタッチャーと一緒に試行錯誤して、当初よりも青味を落とす方向で色を調整していきました。

青味を落としすぎるとグレーに近くなり、全体の印象としては地味になりがち。でも最終的には、理想のトーンが出せたと思います。

小野:名刺ケースを単体で撮影した写真でも、半透明であることが分かりやすく伝わるように、ライティングも巧みに撮影してくれました。

小野:私は、ケースのデザインはしましたが、この賞はTBMという企業の取り組み全体に対する評価だと思っています。

笹木:ダボス会議ではここ数年間、トップ3の議題に水資源の問題が入っています。環境問題に関心がある人には、このビジュアルは非常に響くと思う。特に、水に恵まれない中東の国々などではLIMEXへの関心が非常に高いんです。海外では名刺を使わない国もありますが、私たちのLIMEX名刺をきっかけにして、日本のものづくりの力にも関心を持っていただけたら嬉しいですね。

小野:LIMEXのビジュアル表現に関しては、最初から外国の方にもわかっていただけるように作っているつもりです。ビジュアルに複雑な情報を付加すると、強いメッセージはむしろ伝わらなくなってしまう。だからこそシンプルに、誰が見てもわかる表現を心がけています。

半永久的にリサイクルできるLIMEX

編集部:LIMEX名刺はすでに1900の企業で導入されているそうですね。LIMEXの今後の展望についてお聞かせください。

笹木:LIMEXシートはコスト競争力もあるので、今後も広い分野で代替品として採用されるよう働きかけていきます。すると近い未来にはリサイクルの問題が出てくるので、LIMEXを回収してプラスチックの代替品にリサイクルして循環させるスキームをしっかりと作っていきたいと考えています。現在、すでにスマホケースへのリサイクルも試みています。ほぼ半永久的にリサイクルできることが、LIMEXの大きな特徴です。

片岡:LIMEXは、デザイン性を求められる商品に対して非常に相性がいい素材だと思います。今後は、素材の制約があるために自由にデザインができなかった製品に対し、LIMEXならこんなことができる、と提案できる余地がたくさんあると感じています。

笹木:2017年には横浜青年会議所と基本合意を締結し、「LIMEX を用いた循環型社会課題解決プログラム AQUACTION!」を始動させました。横浜市全体でLIMEXを導入してリサイクルスキームを確立し、LIMEXを循環させていこうという試みです。いずれはこのサイクルが日本で当たり前になり、やがて世界にも広まっていけばいいなと考えています。

片岡:今は、紙を大量に使うのは悪!みたいな風潮がありますよね。だからこそ、LIMEXが循環する社会が当たり前になっていけばいい。そもそも、人類が最初に石灰石から紙を作る方法を発明していたら、世の中の紙は最初からLIMEXだったわけですよね。製品のビジュアル作りをお手伝いすることが、やがて世の中の意識を変えていくことにつながっていくと思うと、やりがいがあります。

笹木:そんな将来を、この“チーム”で目指していけたらいいですね。

小野:LIMEXは各方面から非常に注目されているので、メディアへの掲載依頼も多い。そんな機会を利用して、ビジュアル面でもいろいろなアイデアを試していきたいです。

 

テキスト:ノトヤナオコ

インタビュー撮影:外林健太

 

Profile
プロフィール

笹木隆之

株式会社TBM 執行役員(コーポーレート・コミュニケーション担当)

株式会社電通に入社後、経営者と企業のあらゆる事業活動を“アイデア”で活性化させる未来創造グループに所属。マーケティングを起点にした 新規事業開発、新商品開発、店舗開発のプランニング及びプロデュースなど、 チーフプランナーとして活動。2016年4月に株式会社TBMに入社。


Profile
プロフィール

小野恵央

株式会社電通 クリエイティブ・プランニング局所属 アートディレクター

ブランディング、グラフィック、スペース、プロダクト、とデザイン領域は多岐に渡る。OneShow金賞、ClioAward金賞、D&AD銀賞、CannesLions銀賞、NewYorkADC銀賞、SpikesAsia金賞、Adfest金賞、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞、LexusDesignAward グランプリ、他。

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