VR/ARコンテンツで部屋にいながらできる北欧名所巡りの旅行とは

家にいながら世界旅行できたら……。それを疑似体験できるのが360度俯瞰で景色を楽しめるVR/ARコンテンツ。自分がまるでその風景の中にいるかのようなVRと、スノードームを覗き込むような感覚で見られるAR。両者の特徴を生かしたコンテンツ事例をテクノロジーライターの大谷和利さんが紹介します。

英語に“The next best thing is…”という、定型のフレーズがある。「本当にやりたいことが叶わないときに、その代わりになるもの」というような意味だ。

旅行でいうなら、実際に目的の地に行けることが理想だが、忙しかったり、体調が伴わなかったりしてそれができないとすれば、旅行のパンフレットを見たり、現地の写真集をながめたり、YouTubeで紹介ビデオなどを観ることが、“The next best thing”に相当するだろう。

しかし、最近ではもっといいものがある。それが、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)による疑似体験だ。

SASことスカンジナビア航空がYouTubeで配信している“The Full Scandinavian Experience in 360!”(スカンジナビアの360度フル体験)<https://youtu.be/NZ8kEiUPf48>もその1つで、スカンジナビア3国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)の風景をコンパクトな360度ビューに収めて、VRゴーグルや手持ちしたスマートフォンで周囲を見回すようにして楽しむ仕掛けとなっている。

YouTubeキャプチャ"The Full Scandinavian Experience in 360!"(スカンジナビアの360度フル体験)

 “The Full Scandinavian Experience in 360!”(スカンジナビアの360度フル体験)

再生開始時の正面には、360度映像であることを示すイラストと「SASの旅客機を追いかけてください」の文字が表示される。

旅客機の飛んでいくほうに見る向きを変えていくと、パノラマの上に見どころの名称と国のシンボルが現れる。左から、ムンスクリントはデンマークの美しい崖。ガイランゲルフィヨルドはノルウェーの世界最大級の氷河侵食湾。チボリはデンマークのコペンハーゲンにある遊園地だ。

同じく、ザ・グローブはスウェーデンのストックホルムにある屋内競技場。カルマル・キャッスルもスウェーデンにある、800年の歴史を誇る要塞のような城だ。

ローゼンボー・キャッスルはデンマークの小ぢんまりとした夏の離宮。コペンハーゲン・オペラは、デンマーク王立オペラ劇団のメインシアター。ホエールウォッチングは、ノルウェーの主要な観光資源の1つだ。

名所ではないが、ニュー・ノルディック・クイジーンは、2000年頃からスカンジナビア地方で盛んになってきた、ローカルフードを生かしたメニューを指す。

チャーチ・オブ・アワ・セイビアー(救世主教会)は、デンマークで最も有名な教会で、400段の階段を持つタワーを擁している。ストックホルム・オールドタウンは、別名「ガムラスタン」と呼ばれる旧市街地区で、その意味は文字通り「古い街」である。

ノーザンライツは、ノルウェーとスウェーデンで観察できるオーロラ。ニューハウンは、デンマークの観光スポットでカラフルな飲食店やアンティークショップが軒を連ねる。プルピットロックは、ノルウェー語で「プレーケストーレン」(演説台)と呼ばれる高さ600mの一枚岩からなる崖。アイスホテルは、スウェーデンの北の町、キールナに冬場のみ氷と雪で作られる巨大なかまくらのようなホテルだ。

ノルウェーとスウェーデンはスキーのメッカでもあり、ヴァーサミュージアムは設計の不備から初航海で横風を受けて沈没した17世紀の戦艦ヴァーサ号を引き上げて展示しているスウェーデンの博物館だ。

そして、真下を見ると、「SASでスカンジナビアのフル体験をどうぞ」と書かれている。

 

一般にVR映像は、自由度が高すぎてどこを見ていいか迷うこともあるが、このように旅客機が視点を誘導していく手法は、そこにある種の秩序をもたらす演出として興味深い

もちろん、これを見て実際にスカンジナビアまで来てもらうことが究極の目的だが、意外と知らない自然と人工の観光スポットがいろいろとあることがわかるだけでも、スカンジナビアに親しみを持ってもらうという意味で、有意義なコンテンツとなっている。

この“The Full Scandinavian Experience in 360!”は、自分を中心に、周囲を見回すVRスタイルのコンテンツだが、一方で、同じ名所紹介でも以下のトランスペアレントSFは、逆に周囲から覗き込むARスタイルのアプリである。

ARモードでテーブルの上などに出現させて周囲から覗き込むのが本来の楽しみ方だが、単純にスマートフォンの画面のみでスワイプやピンチイン/アウトしながら、細かなアニメーションの動きを眺めてもよい。

特に名所の説明などは表示されないが、まさにスノードーム感覚で愛でるコンテンツといえる存在だ。

トランスペアレントSF。

トランスペアレントSFアプリを起動すると、サンフランシスコの街を閉じ込めたスノードームが現れる。

ズーム(ARモードの場合には、近づくだけでOK)してみると、この街のさまざまな名所が、巧みに1つにまとめられていることがわかる。

細かいところまでよく作り込まれており、この位置からは、中央で黄色い屋根のケーブルカーが方向転換をしているのが見える。

こうしたVR/ARコンテンツは、体験した人が思わず誰かに見せたくなる口コミ効果やSNSなどを通じたバイラル的な情報拡散にも適している。アプリとなると制作のハードルは高くなるが、VR動画であれば、360度カメラで自作したり、それをイメージサンプルとしてプロに発注することもできるので、社内案内や地域紹介などに活用してみても面白いだろう。

※イメージは、すべて https://youtu.be/NZ8kEiUPf48 と、Transparent SFアプリからのキャプチャです。

 

トランスペアレントSF

iOS版:http://tinyurl.com/y74jhqwq

Android版:http://tinyurl.com/y8gpnqkd

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