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  • 「フランセ」リブランディングの成功事例に学ぶコンセプトの立て方
成功事例に学ぶブランディングストーリー | vol.1 2019.08.07

「フランセ」リブランディングの成功事例に学ぶコンセプトの立て方

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編集部
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ブランディングを成功させているあの企業は、どんなトライアンドエラーを繰り返して今の形を作ったのでしょう。今回は、横浜みやげのイメージから脱却し、女子好みのおしゃれな世界観を作り上げたお菓子ブランド「フランセ」のリブランディングの成功事例を紹介します。(フランセのリブランディング・ビジュアル編はこちらから)

歴史あるブランドをキュートに刷新したのは、男性ばかりのチーム

「フランセ」は、「ザ・メープルマニア」などを展開する菓子メーカー「シュクレイ」の1ブランド。看板商品「果実をたのしむミルフィユ」は「JR東日本おみやげグランプリ2019」で総合グランプリも受賞しています。

もともと「フランセ」は1957年に渋谷で創業した洋菓子店。1997年から横浜に拠点を移し、「横濱フランセ」として地元を中心に愛されてきました。その「横濱フランセ」を、「シュクレイ」が2016年に子会社化(2017年に吸収合併)。東京らしさを持つ洋菓子ブランド「フランセ」として、50〜60代が中心だった顧客から、今後を見据えて若い世代を取り込むためにリブランディングをすることになりました。

リブランディングに携わった主要メンバーは5人。「シュクレイ」の社長や専務、企画開発部部長に、ブランディングやデザインを手がける外部パートナーの担当者2名。その中に、必要に応じて商品開発担当1名が加わり、半年かけてリブランディングをスタート。キュートなグラフィックイメージからは意外ですが、メンバーは全員男性だったのです。

企画開発部長の山口浩二さん。

「リブランディングを始める際、いちばん先に決めたのは、商品を何にするかということ。「横濱フランセ」ではチョコレートやミルフィユ、焼き菓子など多くの商品を扱っていました。“フランセ”として新たにブランディングをするときのやりたい方向性を明確にするために、軸となる商品を3つに絞り込みました」(企画開発部長 山口浩二さん)

その結果選ばれたのが、「ミルフィユ」「レモンケーキ」「ブランデーケーキ」の3商品。中でも、ブランドの中心的存在に据えたのが、圧倒的な売上のあった「ミルフィユ」です。

お菓子の原点をコンセプトに、味わいと形状を一から見直し

食べやすいように縦長の形に変えた。

「2017年は、フランセの60周年という節目の年でもありました。還暦という言葉通り、原点回帰して再出発しようと、お菓子の始まりである“果実”と“木の実”にフォーカス。そこからミルフィユの味のバリエーションを考えました」(山口さん)

旧商品の定番フレーバーは、「キャラメル」「ジャンドゥーヤ(ナッツペーストとチョコレート)」「チョコレート」でした。リブランド後は、果実を楽しむ「いちご」「れもん」、木の実を楽しむ「ピスタチオ」「ジャンドゥーヤ」の4つを定番に据えることにしました。

「毎週10種類以上の試作品を食べました。特に苦労したのがピスタチオ。ピスタチオは若い女性に人気ですが、いちごなどに比べると味の印象がわかりにくいので、誰もが“これこそピスタチオ”と感じられる風味を出すのが大変でしたね。ジャンドゥーヤもさまざまなナッツの配合を試して、アーモンドとヘーゼルナッツの組み合わせを選びました」(山口さん)

味だけではなく、形状もリニューアル。旧商品は3×4cmでしたが、2×6cmの細長い形にして、女性の小さな口でも食べやすいよう工夫しました。

本格的な商品化を前に、「木苺を楽しむミルフィユ」「レモンを楽しむミルフィユ」の2種類を店舗で試験的に期間限定販売。そこでの高評価に勢いを得て、新しいパッケージデザインのもと、2016年9月に新生「フランセ」がスタートしたのです。

リニューアルにつきものの抵抗勢力により、半年間苦境に

しかし「フランセ」のリブランディングは、最初からうまく行ったわけではなかったのです。2016年9月以降、その年の年末年始の繁忙期を経ても、毎月の売上は前年割れが続いていました。

「ブランドロゴが変わったので、店舗の装飾もすべて変更。什器ごと変更した店舗もあるので、リブランディングの予算としては数千万、あるいはもっとかかったかもしれません。そのため、当初の売上ダウンは厳しかったですね。でも、今までのままではダメだからこそ変えたんだ、ここは我慢のしどころだと、社長以下歯を食いしばって耐えました」(山口さん)

苦境の中でも、うまくいくと信じて耐えられたのは、リブランディングに自信があったからだそう。

「元々の横濱フランセを知らないお客さまには、新しいフランセの評判はとてもよかったのです。店舗が入る商業施設の方々にも『随分変わったけど、いいね』と言っていただいていました。だから、絶対このよさが広くわかってもらえる日が来ると信じていました」(山口さん)

“超試食販売”で商品のよさが認知され、売上が拡大

――2017年4月、「フランセ」が「シュクレイ」に統合されたことで、この苦しい状況を大きく変えるきっかけになりました。

フランセの売り上げをあげるきっかけとなった試食販売。

「統合により、全国でもずば抜けた販売力を誇るシュクレイの販売員がフランセに配属されました。横濱フランセ時代は、販売カウンターの中でじっとお客さまを待つ“受け身”の姿勢でした。一方シュクレイは、 “超試食販売”という、カウンターから出て積極的にお客さまにお声がけし、試食をすすめていく手法を取っていたんです。試食をしてもらうことで、新しい「フランセ」のおいしさを広く知っていただき、売上アップにつながりました」(山口さん)

現在、企画開発部で販促係を務める濱田萌笑さんは、元は店長として現場に立っていた経験の持ち主です。

企画開発部で販促を担当している濱田萌笑さん。

「試食は、シュクレイでは、もっとも大切にしている販売法です。試食していただくことでお客さまに、おいしさがダイレクトに伝わるだけではなく、コミュニケーションをとるきっかけにもなります」(企画開発部 濱田萌笑さん)

「弊社は“うちのお菓子のおいしさを知らずに一生を終える人は不幸だ”という姿勢でいるんです(笑)。ですから、買うつもりがなさそうなお客様にもどんどん試食をしていただきます。それはやはり素材に妥協せず、本当においしいものを作っているという自信があるからですね。素敵なパッケージデザインも、フランセとして一番大切にしている“おいしさ”があってこそ効果があるものだと思っています」(山口さん)

こだわり抜いたおいしさと、センスのいいパッケージデザインの相乗効果で「フランセ」は順調に売上を伸ばします。2018年6月には、旗艦店となる「フランセ」本店を表参道にオープン。内装などにもブランドの世界観を表現し、イートインスペースも設けて生菓子も食べられるようにしました。

「横濱フランセ時代は全国に約600店舗を展開していたのですが、シュクレイに統合後、それを関東を中心とした100店舗にしました。首都圏集約型にするため戦略的に店舗数は6分の1にしましたが、1店舗あたりの売り上げは上がっていて、リブランディング前と比べると120〜125%アップしました」(山口さん)

“前年比微増では意味がない、常に高い目標を持つ”というのが「シュクレイ」のモットー。先を見据えた思い切った改革を行い、腹をくくってそれを実行する。それがフランセのリブランディングの成功の秘訣かもしれません。

まとめ

リブランディングを成功させるためには、自分たちが新たに作ったブランドを信じて、続けていく覚悟が必要だと気付かされます。約半年をかけて行ったフランセのリブランディングの成功ポイントは2つ。まずは、たくさんあった商品を厳選し、その商品の素材にこだわり、商品の質を上げたこと。さらに、自信を持って提供する商品を、多くの人に“試食”というカタチで体験してもらったこと。「百聞は一見にしかず」、五感で感じたものは、その人の心に深く残ります。人に認知してもらうために、地道な方法ですが、“味わってもらう”という経験は、顧客の心へ確実に届く方法なのかもしれません。

※フランセのリブランディング・ビジュアル戦略 もチェック。

テキスト:吉永美代
TOP画像撮影:劉怡嘉(acube)
撮影:猪飼ひより(amanaphotography)

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