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  • 海外事例紹介からみるSNS世代の関心をひいた動画広告の工夫とは?
Trend 2018.10.02 VISUAL INSIGHT | vol.17

海外事例紹介からみるSNS世代の関心をひいた動画広告の工夫とは?

大谷 和利
テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー
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テクノロジーライターの大谷和利さんが注目した、世界の先進的なビジュアルユースのトピックを取り上げる連載「VISUAL INSIGHT」。第17弾は、インタラクティブな動画を利用した、アイスクリームブランドの広告をご紹介。ターゲットであるティーンエイジャーへ向けて、興味を引くコンテンツ作りと、日常生活のシーンでさりげなく登場する商品。SNSでの拡散や、話題性も期待できそうなプロモーションムービーです。

先日、韓国に出張した折、旅客機内で見たニューヨーク・タイムズ紙に、こんな全面広告が載っていた。

「たぶん、私たちにとって最悪の広告です。」

出稿主は、広告枠売買企業のThe Trade Desk(ザ・トレード・デスク)。同社は、テクノロジーを駆使して最適なメディアに、最良のタイミングで、絞り込んだターゲット向けの広告を打てることをいちばんのセールスポイントにしている企業だ。

しかし、それが可能なのはデジタルメディアだからこそといえる。ペーパーメディアでは、不特定多数に対して、いつ目にするかわからない広告しか打つことができないからだ。その意味で、自らの企業広告をニューヨーク・タイムズという一流の新聞に載せておきながら、自分たちから見ればコンバージョン率の悪い「最悪の広告」でしかないと言い放ったのである。

もちろん、これには、あえてそのようなメッセージを発することによって、今も新聞広告に固執している企業があれば、デジタルの世界に意識を切り替えてほしいという意図が込められている。

私たちは、特に広告においては、すでにそのようなデジタル優位の世界に生きているのであり、今回取り上げたコーネットというユニリーバ傘下のアイスクリームメーカーも、デジタルメディアでなければ実現し得ないインタラクティブなビデオを巧みに利用して、コンテンツマーケティングを行ってきた。

同社が力を入れるのは、ティーンエイジャー層の需要喚起であり、“Cornetto Love Stories - Two Sides”というビデオでは若者向けの恋愛指南的な内容の中に、チラッと商品を織り込むような見せ方によって、あまり押し付けにならない形でブランドの浸透を狙っている。

ビデオの主人公は、ちょっと内気なジョッシュと、煮え切らない彼の態度を持て余し気味の気さくなカーリー。視点を切り替えることで、親しいながら微妙な距離感のある2人の胸の内がわかるという仕組みだ。

このビデオは主人公の男女の視点を入れ替えられるだけでなく、オーディオも3Dサウンドとして再生され、より臨場感を高めている。

 

 

ヘッドフォンの装着を終えた頃にタイトルが表示され、いよいよ物語のスタートだ。

 

ただし、第一幕にあたる冒頭のカフェのシーンはインタラクティブではなく、「それぞれの視点からはこんな風に見えますよ」ということを暗に説明する映像になっている。

これは、一般にはまだ普及していない自由な視点切り替えの手法をいきなり使用して混乱させるよりも、ワンクッション置くことで違和感を感じさせない工夫といえる。

物語は3幕構成。第一幕は登場人物の紹介が主で、視聴者による視点切り替えはできないが、視点の切り替えによる見え方の変化に慣れてもらえるように編集されている。

 

少し内気な男の子のジョッシュは、カフェでガールフレンドのカーリーが来るのを待っている。

 

ジョッシュは注文したコーヒーとトーストを見つめながら、カーリーが来たら、すぐに学年末恒例のプロム(ダンスパーティ)に誘うつもりだ。しかし、自分の口からは言えないので、ヘッドフォンを渡して、歌で気持ちを伝えたいと考えている。

 

逆光の中から現れるカーリーは、ジョッシュの目からは女神のように見えるという演出。

 

カーリーは、座るとすぐにジョッシュのトーストとコーヒーを引き寄せて食べ始めた。彼女は、ジョッシュの手元にあるプロムのチラシに気づいて「プロムなんて馬鹿げている」と心の中で思う。「誰も誘ってくれないし……」。ジョッシュに「プロムには行くの?」と訊くと「ノー」と答えたので、「自分も行かないわ」と言ってしまう。

 

カーリーは、昨晩、ジョッシュと一緒にゾンビ映画を観たときのことを頭に浮かべ、「彼には少し刺激的すぎたようね」と感じている。

 

同じくジョッシュも昨晩のことを思い出すが、自分が悲鳴をあげていたことは忘れて、早くカーリーと友達以上に親しくなれればと考えている。ちなみに、コーネットのアイスクリームが登場するのは、全体でこのシーンにだけであり、しかも控えめに一瞬映るだけだ。

 

そこに2人の友達であるリオとアメリアがカップルで現れ、ジョッシュはプロムへの誘いを言い出せないままチラシを隠してしまう。リオはハウスパーティのゲームでアメリオにキスしたことが学内で噂になっており、その場に居合わせたジョッシュとカーリーは居心地が悪かった。ジョッシュは、カフェの支払いを済ませて外に出る。

 

ジョッシュとカーリーの曖昧な関係がわかったところで、視点を選択する方法についての簡単な説明があり、物語は第二幕へと移っていく。舞台は、学内の図書室だ。

ここで動画は第二幕となり、画面にオーバーレイされるジョッシュとカーリーのアイコンをクリックすると視点を選べる旨の説明が表示される。

 

たとえば、図書室に入っていく2人を、それぞれの視点を切り替えて見ることができる。白くなっているアイコンが、現在の視点の主を示しており、色付きのアイコンをクリックすると、そちらの視点に切り替わる仕組みだ。

 

また、視点の選択以外にも飽きさせない工夫として、実写だけでなく味のある線画アニメーションを使い、ノートへのいたずら描きの感覚で、妄想を視覚化して見せるシーンなども挿入される。

ビジュアルにも工夫があり、実写だけでなく、このような線画のアニメーションによって、それぞれの友達が勝手に考えた、ジョッシュとカーリーのプロムのお相手候補(ルシンダとダミアン)の妄想も披露される。

 

もちろん、2人は、そんなよく知らない相手を誘うつもりなどなく、図書室の向こうとこちらで互いを意識するが、何を考えているのかがわからず、疑心暗鬼になってしまう。

 

視聴者のもどかしさが高まったところで、物語は第三幕のクライマックスへと向かっていく。

ジョッシュは意を決してカーリーにヘッドフォンをつけてもらい、ラブソングを通じて自分の気持ちを伝えてプロムに誘うことにする。

よく見ると、視点が変わった際に(おそらく撮影時の構図などの都合で)本の配置が変更されていたりするので、そうした間違い探し的な興味で見直していくのも一興だ。

そこで物語は第3幕を迎える。

 

図書室内で偶然ルシンダを見かけて話しかけたジョッシュの姿に、カーリーは気が気でない様子。

 

このままでは誤解されると感じたジョッシュは、思い切ってカーリーに駆け寄り、自分のヘッドフォンをつけさせる。

 

するとライティングが変わって、2人にスポットライトが当たり、ラブソングが流れ始める。

 

踊りまくる2人。

 

そして、ハッピーエンドに。

 

エンドマークは、「読了」のハンコをイメージした“THE END”のスタンプ。

 

ここまで凝った、そして綿密な広告を作ろうとすれば、プロの手を借りなければ実現するのは難しい。たとえば、同じシーンでも視点を変えて撮るにはライティングをすべてやり直したうえで役者に同じ演技をしてもらわなければならず、リハーサルや撮り直しも含めれば、その手間は膨大なものになる。

しかし、今後、VR/AR環境が普及してくれば、このような一人称視点が入れ替わるようなコンテンツも普通に見かけるようになっていくはずだ。

そして、従来の広告ビデオならば1度見て終わりということも多いが、このような視点切り替え可能なコンテンツの場合、シーンごとに立場が変わるとどうなるのかを確かめたくなり、何度も見返してもらえたり、口コミやSNSで拡散される確率も高くなる。

したがって、少なくともこれに準じたアイデアを今からあたためておくことも重要といえ、“Cornetto Love Stories - Two Sides”は、そのためのヒントが数多く散りばめられたコンテンツなのである。

 

※図版は、すべて公式ビデオ<https://youtu.be/ljb3bDmKp5Y>からのものです。モバイル用のコンテンツは割愛されているので、インタラクティブに視聴するためにはコンピュータのブラウザからYouTubeにアクセスしてください。

 

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メンバープロフィール

大谷 和利

オオタニ カズトシ

テクノロジーライター、AssistOnアドバイザー

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デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。著書に『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(アスキー新書)。『iPhoneカメラ200%活用術』(枻出版社)、『スティーブ・ジョブズとアップルのDNA』(マイナビ)『成功する会社はなぜ「写真」を大事にするのか』(講談社)、『ビジュアルシフト』(宣伝会議)、『ICTことば辞典』※共著(三省堂)など。

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