人の空気感で企業の強みを語る。日本工営が映像に込めた思い

世界160カ国で実績を持ち日本を代表する総合建設コンサルタントの日本工営。その会社案内で伝えるべきは「何をしているか」ではなく「なぜしているのか」。社員の思いを撮った映像の手ごたえを、同社広報の高橋真理さん、アマナの金澤亮、大滝洋平に聞きました。

人にフォーカスすると伝わりやすくなる

――まずは会社案内ムービーを制作することになった背景からお聞かせください。

高橋真理さん(日本工営 広報担当/以下、高橋。敬省略):会社全体を表現する、会社のことを知ってもらうための映像作品がほしいと思っていました。新たな中期経営計画をスタートするタイミングで、新しい会社案内ムービーを作ることにしたのです。

金澤亮(アマナ プロデューサー/以下、金澤):日本工営さんへはインナーコミュニケーションの提案中でもあり、会社案内を作ることで社内のモチベーションアップにもなるかもしれないという話をしました。

高橋:私は中途入社で、日本工営には社会貢献への思いが強い社員が多く、それが当社のよい部分だと思っていました。ただ、ずっと働いている社員は案外それに気づいていないのかもしれない、ということも感じていて。今回はあくまでも外向けに発信する会社案内ですが、映像を作ることで、中で働く人にも改めて自社の魅力に気づいてほしいという思いもありました。

 

 

高橋真理(たかはしまり)
日本工営株式会社 コーポレート本部 経営企画部 コーポレートコミュニケーション室
2017年日本工営に入社。主に社内外への情報発信やインベスターリレーションズを担当している。

――建設コンサルティングの仕事を対外的に伝えるのは、難しいことだったのでは。

高橋:確かに、建設コンサルタントは仕事の領域が広く、当社はそれに加えて電力事業や都市空間事業も手がけています。仕事そのものを正確に全部伝えようとするとものすごく説明的になり、なおかつ伝えきれないと思いました。仕事や事業を細かく説明する方法ではなく、会社のことを伝えられる方法はないかとアマナさんに相談しました。

大滝洋平(アマナ ディレクター/以下、大滝):日本工営さんは理念がしっかりしていて、想いが明確でした。社員の方々の素直な言葉の中にはたくさんのヒントがあり、わかりやすかったです。若い人たちに建設コンサルタントの仕事にわくわくしてほしいという言葉を高橋さんから聞いて、そこを表現したいと思いました。

大滝洋平(おおたきようへい)
株式会社アマナデジタルイメージング crossmotion制作局 ディレクター
6年間、映像プロダクションで勤務後、2017年10月アマナ入社。企業ブランディング、イベント、商品プロモーション、ミュージックビデオなど、幅広いジャンルのディレクションを担当。

――映像制作に関して具体的なリクエストはありましたか。

高橋:社員の声を使ってほしいとリクエストしました。社員の仕事に対する真剣な思いを映像にしてほしいと。

金澤:最初のブレストで日本工営さんの強みを聞くと「総合力」だという話がありました。その総合力をどう表現するかについて考えたとき、営業実績を数字で見せるだけではなかなか本質的な強みがわかりにくいなと思いました。そこで社員にフォーカスしたストーリーを見せることで、「人が資本である」という強みを伝えるようにしようと提案しました。インタビューという形でコンテンツに落とせたことが、よかったと思います。

アマナの金澤。

インタビュー映像で、理念をビジュアル化

――会社案内ムービーは、イントロ、インタビュー、歴史、エンディング、という構成です。長尺ですがどのような意図がありますか。

大滝:オーソドックスな会社案内を作ってほしいというオーダーだったので、汎用性があってイベントやリクルートに分割して使えて、かつ全体的にストーリーとして筋が通るものにしました。「誠意をもってことにあたり、技術を軸に社会に貢献する。」と、冒頭で経営理念を伝えていますが、実際に社員が共通の想いで仕事をしているからストーリーが成立したんです。

――インタビューのシナリオも作成したのですか。

大滝:質問は考えましたが、シナリオはありません。軸として「なぜ日本工営で働いているか」を引き出して、それが理念とリンクしていることが狙いでした。大きな会社になると皆が共通認識を持つことが難しく、意図的にリンクさせないとダメかなと思っていましたが、インタビューを通して皆さんが理念に基づいて仕事をしていることがわかりました。

高橋:確かにそうですね。私から社員にオーダーしなくても、伝えたいことを語ってもらえました。

――インタビューに、社員の方が海外で撮った映像を入れたことも効果的です。

大滝:日本工営さんの仕事を描くには、規模感が大事。社員さんに海外で動画を撮ってきてもらえませんかと高橋さんに聞くと、いいですよと頼んでくれたんです。

高橋:インタビュー対象の社員が海外で業務をしてくるタイミングがあったので、頼み込みました。

大滝:社員さんがスマホやホームビデオカメラで撮ってきてくれた動画が、今回の映像のクオリティを上げてくれました。画がきれいだとか美しいかとかは、どうでもいいんです。今回は、映像があることが大事でした。インタビューの中にインサートすればドキュメンタリー的な感じで成立するのではと思っていたので。

高橋:私も社内にある映像をかき集めました。

大滝:その中には、ドローンで撮影されたスケール感のある空撮映像もありました。創業者の物語や経営理念の起源となる初の海外事業、ミャンマーのバルーチャン発電所の映像があったのはよかったですね。

高橋:会社の歴史上、大事なプロジェクトなので記録映像として撮っておいたものです。うまく活用できて本当によかった。

ミャンマーのバルーチャン発電所
ミャンマーのバルーチャン発電所

 

――オープニングとエンディングのアニメーション使用には、どのような狙いがありますか。

大滝:コンセプトとして思い付いたのが「種」。種を撒き、そこに芽が出て、大きくなって根を張り続ける様が日本工営の仕事と重なると思いました。それをビジュアル化する手法としてイラストを選択しました。日本工営が持つ、暖かな雰囲気を表現したかったので。

高橋:「種」と聞いたときに、今までにない発想だと思いました。そういうふうに会社を表現していただいたことはなかったので。

――先ほどの話で中途入社の高橋さんが会社の魅力に気づいたように、外からの客観的な視点は企業のブランディングに大事なことですか。

高橋:はい、そうだと思います。大滝さんが弊社のことをすごく勉強してきてくださって、打ち出そうとすることに違和感はなく、すてきだと思えることが多かったです。中の人が思うカラーをそんなに出さなくても、外の方が見ていい雰囲気だと思えるところを打ち出していただくほうが、よりいいものができると感じました。

 

動画だからこそ伝わる、人が醸し出す企業の魅力

――会社案内ムービーの効果は表れましたか。

高橋:会社の受付でも映像を流していますが、それに気づいて全編をYouTubeで見て、改めて当社のファンになりましたとメールをくださる方もいました。社内でも素晴らしい作品ですねとコメントをくれる人がいたり、想いを込めて作ったものは反応が返ってくるとわかりました。リクルートで使いたいという話があり、インタビュー対象者の映像を切り出してもらったり。

――会社の中の人たちを表現できましたか。

高橋:そのとき話していた空気感まで含まれた状態で映像に載っていますね。社員が理念のもとに仕事をしていることを伝えてくれました。

大滝:人の空気感は、止まっているよりも、動いているほうが絶対に伝わります。そのために、人が考えながら話すときの「間」をなるべく壊さないようにしました。インタビューで6人6様の個性がにじみ出て、会社で働く人の雰囲気や匂いが伝わり、想像できることが動画の強みだと思います。

金澤:アマナにムービー制作チームが数ある中でBtoBの案件を多く手がけ、企業のいろいろな思いを汲み取ってくれる大滝にディレクションを依頼したのは正解でした。

大滝:企業がやっていることを紹介するだけでなく、なぜやっているかを見せることが大事だと思います。そこをビジュアル化すれば、社内的・対外的な用途に関係なく、会社の魅力を伝えることができるのではないでしょうか。

 

テキスト:さとうともこ  撮影:上村可織(UN)

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