新型コロナウイルスを撃退する手洗い法「#NINJAWASH」。国連からのお題に答えた遠隔制作の術

国連が世界中のクリエイターに呼びかけた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)への対策促進のためのコンテンツ制作。国連と世界保健機関  (WHO)が優先する6つのアクションを世界へ伝えることが目的です。

アマナのクリエイターがこの取り組みに有志で参加。打ち合わせから撮影や映像編集、納品に至るまで、一度も物理的に集まることなく遠隔で行った過程を、制作メンバーに聞きました。

手洗い×忍者!? 国連からのお題に答えたクリエイティブ

国連と世界保健機関  (WHO)が優先するのは、次の6つのアクション。提出されたコンテンツは選考を経て、質の高いものが国連のプラットフォームで拡散することが検討される、というもの。また、制作者自身のSNSなどで発信することも推奨されています。

協力が求められた6つのアクション
・個人の衛生管理(Personal Hygiene)
・身体的距離の確保(Physical Distancing)
・症状の理解(Know the symptoms)
・やさしさの伝染(Kindness contagion) 
・迷信への対抗(Myth busting) 
・さらなる行動、寄付を(Do more, donate)
参照:クリエイティブ産業の皆さまへの グローバルな呼びかけ

アマナがこの企画に参加したきっかけは、情報をキャッチしたアマナデザインの執行役員が社員たちに呼びかけたこと。ZoomのURLが全員へ送られ、そこへアクセスしたメンバーが参加することになりました。

「アクセスしたその場でどんなものを作るかをブレストをして、どのように制作を進めるかを議論しました。提出締め切りまで1週間ということもあって、その場でブリーフィングを読み合わせ、ブレストしたキーワードを組み合わせて、1時間ほどでアウトプットすべきアイデアが生まれました」村上英司(アマナデザイン/クリエイティブディレクター)

6つあるアクションからテーマとして選定したのは「個人の衛生管理」。中でも、手洗いにフォーカスして進めることになりました。
ウイルスを除去するには30秒以上の手洗いが推奨されていますが、事あるごとに行うのは面倒なもの。「ウイルスと戦う」という深刻な問題を伝えながらも、見た人が行動に移してくれる表現を考えていたところ、インスピレーションを得たのが「忍者」でした。

「忍者って胸の前で手を組んで“印(いん)”を結ぶんです。調べていくと、忍者の印は『除災戦勝』を祈り、精神統一に使われていたことがわかりました。アニメ『ナルト』を見たことがある人は知っているかもしれませんが、印にはいろんな種類があって、その形がWHOが提唱する手洗いの動きに似ていたんです」(灰尾諒美/コンテンツプランナー)

海外でも認知度の高い忍者は、グローバルへの発信にもぴったりです。手洗い」と「忍者の印」を組み合わせ、「技を使って手に付着したウイルスをすべて倒す」ことをコンセプトに、キャッチーでやってみたくなるコロナ撃退手洗い法「#NINJAWASH」を制作することになりました。

すべてのプロセスを遠隔で。制約の中で叶えた撮影の裏側

制作したのは、短尺ムービーとグラフィック厚生労働省が発信している手洗い方法をベースに、忍者の印に見立てた6つの技を開発しました。


「#NINJAWASH」は竜巻砲、虎乃爪、谷攻、龍乃逆襲、川崎アクセル、手首滅菌砲の6つの技から構成される。

「竜巻砲に始まり、虎乃爪をつくって谷間攻めて、ドラゴンストライクバッグで手の裏側を攻めて、川崎アクセルで親指を、そして最後にバズーカで倒す、という流れです。一見マニアックですが、技のコマンドで覚えると、面倒くさい手洗いも毎回楽しんでできるんじゃないかと思います。

また、アートディレクターの片柳からの提案で、深刻な課題と受け取ってもらうためにも、『WARNING(警告)』を想起させるキャッチーな黒と黄色をキーカラーとしました」(村上)

「#NINJAWASH」キービジュアル。

SNSなどで展開し、洗面所に貼ってもらうことを想定。

「細かいこだわりなんですが、衛生の観点から水ですすぐときもレバーを触っちゃいけないので、ムービーでも掌ではなく肘でレバーを押しています」(灰尾)

細かい所作にもこだわりました。

一番のポイントは、撮影や動画の編集含め、すべて遠隔で行ったことにあります。当初は少人数でスタジオ撮影を行う予定でしたが、刻一刻と変わるコロナウイルスの感染状況を鑑み、感染リスクを回避するため取りやめに。一度は立ち消えそうになったものの、フォトグラファーからの一言で撮影方法を変えて挑戦することになりました。

「フォトグラファーの佐野さんが『せっかくだから、できることはやりますよ』と言ってくれたので、とにかくやれるだけやろうと決めました。そこからADの片柳さんとすぐにリファレンスを詰め直し、佐野さんの自宅で撮影できるようモノクロでシンプルなビジュアルを提案しました」(村上)

モデルはフォトグラファーの家族が務め、衣装はネット通販で調達。フォトグラファーの自宅に和室があるというラッキーな環境にも助けられ、照明はIKEAの3灯ライトを駆使しながら撮影を行いました。撮影中は、写真編集ソフトウェア「Capture One」に表示されたカットをZoomの画面共有機能を使ってメンバーにシェア。全員がリアルタイムで確認しながらディレクションを行いました。

撮影中のZoom共有画面。手や肘の角度など細かくチェックしていきます。

「いつもの撮影現場は人によって確認レベルに差がありますが、オンラインだと全員が同じ画面を見ることができ、ディテールまでチェックできます。いつもよりちゃんと確認できているんじゃないかってくらい、みんな見てくれて(笑)。どんどんOKを出していき、4〜5時間ほどで撮影を終えることができました」(村上)

「撮影後はZoomやSlack、メールなどを駆使して制作を進め、制作期間1週間ほどでムービーとグラフィックが完成しました。ポスターはキービジュアルと技ごとのビジュアルを制作し、SNS展開も考えて縦型の動画も作りました。縦型動画は技がよりダイナミックに見えると思います」(灰尾)

縦型動画のキャプチャ。

これからの撮影のカタチ

ストレスはほとんどなかったという遠隔制作。日常的にクライアントワークを共にし、信頼し合うチームだったからこそ実現できたことでもあります。

クリエイティブだけでなく、各スタッフの動きも含めてディレクションできるかどうかも、遠隔で進めるポイントです。『これ誰やるの?』っていう迷いをなくすために、構成を詰める、事前に撮るカットを明確にしておく、などタスクを洗い出して、みんなに仕事を振っていきました」(村上)

また、今回の制作で広がったのが、遠隔撮影の可能性。世界中で撮影案件のほとんどがストップしていますが、モデルにセルフィー撮影をしてもらったり、フォトグラファーが遠隔でライティングなどをディレクションし、Zoomで画面キャプチャしたりと、リモートで撮影を行う事例も増えています。

「今回遠隔でやってみたことで、クライアントには現場に来ていただかなくても、画面共有を使えばリアルタイムで確認していただけることがわかりました。最低限のスタッフでスタジオに入り、クライアントと他のスタッフはオンラインでつなげば、感染リスクを抑えて撮影ができます」(村上)

あらためて考えたいビジュアルコミュニケーションの力

物理的に集まることが難しい状況でも、撮影の可能性を見出した今回のクリエイティブ制作ですが、ビジュアルコミュニケーションに携わるアマナとして、今世界が直面する問題にビジュアルで向き合いたいという想いも、動機の1つだったといいます。「#NINJAWASH」が少しでも、感染予防や新型コロナウイルスの撃退、そして1日でも早い事態の終息につながることを祈ります。

ポスタービジュアルは以下よりダウンロードできます。おうちに貼って、一緒に「#NINJAWASH」しましょう

「#NINJAWASH」ダウンロード

プロデューサー:釜田 俊介 / 宮崎 佳祐 / 田房 雪花
クリエイティブディレクター:村上 英司
アートディレクター:片柳 満
フォトグラファー:佐野 洋介
ムービーディレクター:大滝 洋平
コピーライター:眞木 茜
コンテンツプランナー:灰尾 諒美
キャスト:佐野 ミエ
スペシャルサポート:星山 明美 / 清水 悠生 / 松本 光平 / 佐藤 謙介 / 伊藤 太一
翻訳:染谷 モニカ

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