SDGsで地域社会の未来を描く滋賀銀行の挑戦
2018年に金融機関として初めて「ジャパンSDGsアワード」を受賞した滋賀銀行。以前から積極的にCSR活動や環境経営に取り組んできた同行では、全国に先駆けてSDGsの目標達成に向けたさまざまな取り組みを行っています。地域金融機関がどのようにSDGsを本業に落とし込んでいるのかについて、総合企画部CSR室の大西佳央梨さんに伺いました。
環境意識の高さと「三方よし」の精神が活動のベースに
【滋賀銀行はこんな会社です】
近江商人である西川貞二郎らが創業した八幡銀行と百卅三銀行の合併により、1933年に設立。滋賀県内に拠点を置く金融機関としては最大規模を誇り、融資はシェア約5割を占める。従来より環境経営に力を入れており、地域とともに持続可能な社会の実現に向け邁進している。
──SDGsに積極的に取り組むようになった時期と理由を教えてください。

<PROFILE>大西佳央梨|滋賀銀行総合企画部CSR室所属。CSR室においてSDGsに関する業務を担当し、地域への普及や啓発に向けた施策を立案している。
大西佳央梨さん(以下、大西。敬称略):2017年11月にSDGs宣言をしましたので、そこがスタートと思われていますが、実はそれ以前から長年CSR経営に取り組んできました。当行のCSR経営の特徴は、“企業は社会に対して役立つものでなくてはならない”という考えのもと、慈善活動ではなく本業である銀行業としてやっていたところです。ですので、2015年にSDGsが登場してからまったく新しいことを始めたわけではなく、SDGsというツールを使って、今までやっていたものを深化させた、というのが正直なところですね。
──なるほど。では以前から積極的にCSRや環境経営に取り組んでいたのはなぜですか?
大西:1990年代に当時の頭取が「21世紀は平和と環境の世紀になる」と、本業で地球環境を守る取り組みを始めたのがきっかけです。以来、環境・福祉・文化を3本柱としてCSR経営を行ってきました。その中でも特に重視しているのが環境で、お金の流れで地球環境を守る「環境金融」に力を入れています。
その背景にあるのが、滋賀県の面積の6分の1を占める琵琶湖の存在です。滋賀県では、昭和50年代にせっけん運動という市民運動が起こりました。当時、合成洗剤に入っているリンなどが琵琶湖に流れ出て、赤潮が異常発生したのですが、それではいけないと人々が立ち上がったのです。
それ以来、“琵琶湖は未来からの預かりもの、きれいな状態で次世代に引き継いでいかないといけない”という意識が県民の間に根強くあるんですよね。実際、私も子どもの頃に、家の近くを流れている川で、川が汚れてしまうような遊び方をしていたら、親に“そんなことしたら琵琶湖が汚れるからあかん”と言われて育ってきているほどです。
──もともと環境意識がとても高い土地柄なんですね。
大西:はい。それに加えて、滋賀県には近江商人が経営哲学としてきた「売り手よし、買い手よし、世間よし」という三方よしの精神が根付いています。実はこの三方よしは、日本版SDGsと言われているんですよね。当行が行っていた環境経営、CSR経営が地域で認められ、今まで続いているのには、そのようなベースがあると思っています。
環境金融、エコオフィス、ボランティアが3本柱
──環境経営に力を入れているということですが、具体的にはどんな取り組みをされているのでしょうか?
大西:当行の環境経営には、環境金融、エコオフィスづくり、環境ボランティアの3本柱があります。環境金融の面では、2005年に環境格付評価(PLB格付)を導入し、省エネや省資源、ISOの取得状況などによって金利を優遇しています。個人向け商品としては、2003年に「エコプラス定期」の取り扱いを開始しました。こちらは定期預金を預けていただく際に、紙ではなくお電話やインターネットで預金をしていただくと、1回につき7円を当行が拠出して積み立て、貯まった資金で環境保全活動をするというものです。2017年からは、琵琶湖の固有種であるワタカやニゴロブナの放流資金として拠出し、琵琶湖の生物多様性を守っています。
──サステナブルなオフィスづくりも進めていますね。

大西:はい。2015年に滋賀県栗東市に環境配慮型の店舗をオープンし、電気自動車を採用したり、CO2排出量が実質ゼロとなる店舗づくりを目指しています。導入した理由としては、滋賀銀行が環境に配慮した活動をしているということをみなさんに知っていただくのもそうなのですが、ここを訪れていただいたお客さまにも、環境に配慮した活動を意識するきっかけにもなればと期待しています。
──行員のみなさんは、そのような取り組みを自分ゴトとして捉えられているのでしょうか?
大西:はい。そのために当行が重視しているのが環境ボランティアなんです。1990年代後半から“いきものがたり”活動といって、琵琶湖の生物多様性を守る活動をしています。行員にとっては本業の活動がどういう意味を持っているのかを身をもって知る、従業員教育にもなっています。過去にはビワマスという琵琶湖固有種の卵を養殖場から頂戴してきて、自宅で孵化させ、放流していたのですが、このように自分が関わることが、SDGsでいうところの「自分ゴト」になるんです。
実際に体験していることほど、説得力のあることはありません。自分たちが体験し理解した上で、お客様に環境金融商品をご提案に行けますので、我々のボランティア活動は、環境経営の中に組み込んだシステムでもあるんです。
──SDGsには17の目標がありますが、滋賀銀行の取り組みとどのように関わっているのでしょうか?

大西:こちらが当行の取り組みをSDGsと紐付けた一例です。銀行の業務は公共性が高いので、もともとある商品やビジネスだけでもかなりの項目を網羅できたのですが、2017年のSDGs宣言以降、それに加えて新たな取り組みを始めています。課題解決型ビジネスに取り組みたい方の事業化をサポートする「滋賀SDGs×イノベーションハブ」、創業・第二創業に取り組む企業を生み出すことを目的に実施している「サタデー起業塾」において特別賞「SDGs賞」を新設、さらには、SDGsに貢献する新規ビジネスに取り組むお客さまを支援する「ニュービジネスサポート資金(SDGsプラン)」など、さまざまな支援策の拡充を進めています。また、取引先の取り組みをマスコミに紹介するといった「情報発信」にも力を入れています。

SDGsビジネス・マッチングフェアの様子。たくさんの企業が参加している。
地方銀行として、持続可能な地域社会をめざす
──では地方金融機関がSDGsに取り組む意義はどこにあるのでしょうか?
大西:やはり地方経済を豊かにすることですね。資本力のあるメガバンクと違って、地方銀行はその地域から逃げられません。地域が良くならないと、滋賀銀行の未来はないのです。当行でも従来は収益を業務目標にしていましたが、今はお客さまの相談件数ですとか、持続可能な社会を作るための融資の件数をメジャー(基準)にしています。
金融機関同士の競争ではなく、金融機関同士あるいは他の企業と手を取り合って、地域社会を良くしていく。その結果、初めて私たちもサステナブルでいられる、その順番なんですよね。おかげさまで滋賀銀行は県内でのシェアが高く、それだけ地域経済に影響を与えやすい存在でもあります。ですから当行は社会的な課題解決をしながらお金を回し、地域の企業に発展していただくのが存在意義だと考えています。
──最後に、今後の課題を教えてください。
大西:人々の意識をSDGsの意識に変えていかないと、当行の活動に賛同していただいたり、持続可能な社会の実現も難しくなりますので、SDGsリテラシー教育に力を注がなければならないと思っています。若手行員の中には日頃の業務とSDGsがどう結びついているのか、なかなか腹落ちできない行員もいますので、SDGsをより自分ゴトとして捉えられるように、階層別研修にCSRやSDGs教育を盛り込んでいます。
対外的には、小中高生向けにもSDGs教育をしています。将来、子どもたちがSDGs思考を持って行動したり、地域がサステナブルになったり、消費者になったときに滋賀銀行を金利ではなく活動から選んでもらえたら、これ以上うれしいことはありません。
まとめ
地方銀行として初となる「SDGs宣言」以前から、他行に先駆けて環境金融に取り組み、社会的課題解決に向けたビジネス創出の支援をしている滋賀銀行。取材時に特に印象的だったのが、「銀行=金利というメジャーを変えたい」という言葉です。SDGsを根付かせ、地域社会の持続可能性を高めること。滋賀銀行のユニークな取り組みの数々から、これからの時代に即した金融機関のあり方が見えてくるようです。
【関連特集】企業から、世界を変える。SDGsの取り組み方
インタビュー・文/小川尚子